センセイ失格

010 知らんぷり ページ10

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すっかり上がった雨。






｢何してたの？｣





光｢んー？新作の映画レンタル始まってたからさ。見よっかなーと思って。｣





｢……そっか。ごめんね？｣





光｢や、いーよ別に。つかめずらしいね、山田は？｣








そう、“山田”は今日はいないの。みんなそんなにびっくりすること？………でもそうだよね。ほんと、いつも待っててくれるから。こっちが生徒会で遅くなっても、何してても絶対に。





何度も告白してくれて、そのたびにごめんねって言うんだけど、涼介くんには効かないみたいだから……








光｢そろそろ言ったら？｣





｢なんて？｣





光｢んー？だから、何回言われても無理です、って｣





｢……ひかが言って、｣





光｢なんでよ(笑)｣









お兄ちゃんみたい。同じクラスで、よく気にかけてくれたり、わたしのこと見ててくれて、悩みを相談したって大抵はもう全部悟られてたり。









光｢でもお前、どーすんの。｣





｢んー、｣





光｢聞いてる？｣









ちょっとだけ眠くなってきたことも、たぶん気づいてる。上の空になりはじめた返事もぴしゃって捕まえて、引き戻してくれるひか。でもほんとは、眠いのが半分と、聞きたくないのが半分。









光｢好きな人いんでしょ？｣





｢……うん、｣





光｢どうなの。そいつとは。うまくいきそう？｣








………たぶんそれも、気づいてるんでしょ？お前はわかりやすいってちっちゃい頃から言われ続けてきた。先生への想いも、それが叶わない恋だってことも。ひかは、知らんぷりしてくれるの？








｢……彼女、いるんだって。｣





光｢彼女？｣







は？って言いたげな横顔。眉毛をくいって動かすひかの癖。








｢……今日きいちゃった、｣





光｢ん？｣





｢じゃあ別れる？って。電話越しに誰かに聞いてた。｣








ぽつり、ぽつり、話していくわたしを、呆れたような顔で見つめるひか。もう慣れちゃったよ、その心配そうな顔。

やめとけって、いっそ言ってくれたら楽なのに。

｢そっか、そうなんだ……｣って。また柔らかい声で、聞いてくれるでしょ。優しいから、余計に辛くなる。









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