センセイ失格

016 子ども扱い ページ16

.









有岡｢ん、とりあえず体操すっから適当に広がって。｣







だるそうな声。眠いのかな。先生が前に立つだけでなんだかみんなが嬉しそう。｢はぁーい｣ってわたしも、みんなみたいに可愛く返事したらよかったかな。せっかく近くにいられる唯一の授業なのに、おもしろくないもん。体育。





運動は好きでも嫌いでもないけど、嫌でも見なくちゃいけないでしょ、先生がみんなにベタベタされるの。





２人きりならあんなに話せても、みんながいると何故か、遠ざかってしまうから……









有岡｢おーい、聞いてんの？｣





｢っ、すいませ…｣





有岡｢ったく……お前俺とペアね。はいランニング。｣









ふわって頭に手を置かれて、一瞬固まっちゃった。

何が起こったのかわかんなくて。





だってみんながいるのに。だっさいジャージ着て体育してるわたしの頭を、ぽんっと撫でていった先生の気持ちに、ひたすらついていけないでいる。こういう仕草ひとつが生徒の気持ちを弄んでいること、先生は気づいてるのかな。








光｢何赤くなってんの、｣





｢な、ってないよ……｣





光｢ふふ。わかりやすー｣







ニヤニヤしながらほっぺをつんつんしてくるひか。




ねぇ、やっぱ気づいてるよね。









｢ひか、｣





光｢んー？｣





｢ちっちゃい子みたい？｣





光｢お前？｣





｢うん、｣








だってみんな、子ども扱いするでしょ。そりゃ体だって小柄なほうだし、童顔ってよく言われるから、仕方ないけど……








光｢んー、｣








きっと子どもに見られてる。女の子としてなんて絶対見られてなくて、どう映ってるかなんてそんなの聞く勇気もない。大人だったら、先生のそういう人くらいにはなれたのかもしれないのに。







.

017 赤く→←015 叶わなくていい

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す