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027 後ろ姿さえ愛しい ページ27

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大貴「ちょっと来て、」





「…………」









黙り込んだわたしを見兼ねて、大貴くんがそっと手を握ってくれた。優しく手を引かれて連れてこられたのは、人通りの少ない路地。

泣いちゃだめだ、そんなずるいことしちゃだめだと必死に感情を押さえ込もうとするけど、今日はもうだめかもしれない。




だってそんな優しい目で、心配そうに見つめられたら、全部言ってしまいたくなるでしょう?




本当は大好きでたまらないんだよって。でもあと少しで未来に帰らなきゃいけないんだって。わたしのことも、もちろん一緒に過ごした日々も、大貴くんは全部忘れちゃうんだよって。









大貴「どうしたの。なんでそんな顔してんの。」





うつむくわたしの顔を覗き込み、そっと頭に手を置いて優しく撫でてくれる。





「……ほんとに、何でもない。大丈夫、」





大貴「…………」





「ごめん。ちょっと、なんか、」





大貴「なんで?」





「………」





大貴「なんでそうやって隠すの。いっつもそうだよ。Aが不安そうな顔してる時、悲しそうにしてる時、いつもひとりで飲み込んで、何でもないって顔して笑ってさ。」





「………」





大貴「気づいてないとでも思った?Aが思ってるより何倍も、何十倍もAのこと見てるよ。ちゃんと見てる。だからいつか言ってくれねえかなって、ずっと思ってた。頼れる男になんなきゃなって。」





「……ごめん、」





大貴「謝ってほしいんじゃないよ。」





「ごめんね…っ、」









だめだ。もうだめ。

ぽろぽろと両目から涙が溢れ出す。今まで堪えていたものが全部、涙となって頬を伝う。









大貴「ちょ、ごめん、ごめんな?強く言いすぎたな?」







違う……

大貴くんのせいで泣いてるんじゃない。






直後にはぐっと体が引かれて、その胸に抱きしめられた。止まらない涙の粒が大貴くんの制服を濡らしても、涙の理由がわからなくても、優しく抱きしめ、そっと背中を撫でてくれる。

大丈夫大丈夫、大丈夫だから、って。







「…大貴くん、っ」





大貴「ここにいるよ。大丈夫。」









結局、心配だからと家まで送ってくれた。

じゃあね、とわたしの頭に手を置いた大貴くんは、寒そうに肩を縮め、両手をポッケに入れて帰っていく。







後ろ姿さえ愛しい、雪がちらつく午後のこと。






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いく(プロフ) - パレードが始まるが頭の中に流れました!!ステキなお話をありがとうございます。 (2020年8月9日 10時) (レス) id: bf142477e0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - むぎさんの作品まじで大好きです。何億回でも読めます。 (2020年3月24日 22時) (レス) id: 62a0eb8cec (このIDを非表示/違反報告)
じゃん - 受験終わったあとの楽しみにしてて、今日読み終わりました。相変わらずむぎさん最高すぎます。大好きです。 (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2c5e964fc3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 好きすぎました!!めちゃくちゃ泣いたしめちゃくちゃドキドキしたし有岡くんが有岡くんで、このお話大好きです! (2020年3月14日 16時) (レス) id: d970aa184c (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。(プロフ) - 完結おめでとうございます!めちゃくちゃ幸せでした!またいつか機会があれば、未来に戻ってから結婚までのお話も気になるので、読めたら嬉しいな〜と思いました! (2020年1月1日 13時) (レス) id: f99e88b778 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2019年12月1日 12時

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