センチメンタルパレード

016 意地悪しないで ページ16

.









大貴｢聞いてた？｣




｢っ、｣









彼女が走り去り、背中が見えなくなった後。

わたしも後を追うように駆け出そうとしたその時、後ろから声がした。









｢ご、ごめん……聞くつもりなくて、｣





大貴｢いいの。なんか用あったんじゃないの？｣





｢あ、えっと……ノートを、｣









何を必死になってるの。

ひとりで慌てて。ドギマギして。至って冷静な大貴くんとは大違い。さっきまで聞いていた会話が嘘のよう。









｢さっきの……｣




大貴｢あぁ、うん。｣




｢最後まで、聞いてあげないの？｣








こんなこと、聞かなくていいのに。









大貴｢もう何回も言ってんの。好きな子いるからって。でもなかなか諦めてくんなくてさ。｣




｢………｣




大貴｢まぁ、そりゃ冷たくしたり、突き放したり、したら嫌われるとは思うんだけど。できないんだよね。最低でしょ。｣









ふふ、と悲しく笑う大貴くん。

違うよ。それは違う。わたしにはわかる。嫌われたくないとか、そういうんじゃなくて、冷たくしたくないんだよ。されて嫌なこと、人にしたくないんだよ。




本能的にそう思ってるだけ。優しいんだよ大貴くんは。誰にでも優しいから、









大貴｢誰にでもじゃないよ。｣





｢……、｣





大貴｢誰にでもじゃない。｣









何、え、嘘……

今の、口に出してた？









大貴｢気づいてるなら意地悪しないでほしいなぁ。｣




｢………、｣




大貴｢ふふ。じゃあね。｣









すれ違いざまにぽんぽんっとわたしの頭に手を置き、教室を出ていく大貴くん。






気づいてるよ。気づいてるけど。







何がどうなっても、12月にはいなくなっちゃうんだ。









.

017 好きと言わずに→←015 涙

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す