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035 未来 ページ35

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家まで送ると言って聞かない彼を強引に断り、とぼとぼと帰り道を歩いた。

こうしていても、思い出すのは彼のことばかりで。この半年間、ほとんどの時間を彼と過ごしていたことを思い知る。






6月、という何とも微妙な時期に転校してきたわたしを、彼は率先してクラスの一員にしてくれた。誰にでも分け隔てなく優しくできる、温かい人。そんな彼の恋人になれたことが、何より嬉しかった。




いつだって、彼と過ごす日々は輝いていて。

このまま彼といられたら。そう何度も、








「おかえり。」








アパートの門にもたれ掛かっている男。

わたしにしか見えない、いつもの。








ユウリ「ちゃんと言えた?」




「……うん、」




ユウリ「もっと泣いてるかと思ったけど。」




「泣いたよ。十分泣いた。」








フフ、と相変わらず口元で笑っている。









ユウリ「だから言ったでしょ。もっと早く別れなきゃだめって。」




「だって好きだっ、」




ユウリ「だからこそだよ。」








もたれ掛かっていた体を起こすユウリ。

この半年間、わたしを観察すると言いながらも、何度も何度も助けてくれた。









ユウリ「好きだからつらいんだよ。そうやって涙が出るのも、苦しいのも、好きだから。」




「…………、」




ユウリ「最初に言ったはずだよ。恋なんかしたら、傷つくのはAだよって。」




「それでもよかったもん。幸せだったもん。この半年間、彼といられて幸せだった。」




ユウリ「引っ越し、信じてるの?」




「信じてると思う。嘘つきたくなかったけど。」




ユウリ「仕方ないよ。傷つけないためだから。じゃあ明日、迎えに来るね。」









そう言って、どこかへと歩いていったユウリ。





未来は待ってくれない。









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いく(プロフ) - パレードが始まるが頭の中に流れました!!ステキなお話をありがとうございます。 (2020年8月9日 10時) (レス) id: bf142477e0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ - むぎさんの作品まじで大好きです。何億回でも読めます。 (2020年3月24日 22時) (レス) id: 62a0eb8cec (このIDを非表示/違反報告)
じゃん - 受験終わったあとの楽しみにしてて、今日読み終わりました。相変わらずむぎさん最高すぎます。大好きです。 (2020年3月24日 22時) (レス) id: 2c5e964fc3 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 好きすぎました!!めちゃくちゃ泣いたしめちゃくちゃドキドキしたし有岡くんが有岡くんで、このお話大好きです! (2020年3月14日 16時) (レス) id: d970aa184c (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。(プロフ) - 完結おめでとうございます!めちゃくちゃ幸せでした!またいつか機会があれば、未来に戻ってから結婚までのお話も気になるので、読めたら嬉しいな〜と思いました! (2020年1月1日 13時) (レス) id: f99e88b778 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:むぎ | 作成日時:2019年12月1日 12時

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