091 一生守ってくって決めたのに ページ42
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名取side
数日後。
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いつかもこんなことがあった。
意識のないAと、ベッドサイドの丸椅子に腰掛けてただ傍にいることしかできない俺。真っ白な病室は静かすぎて、廊下を歩くナースやドクターの足音さえ無駄に響く。勤務終わり、そろそろ自分の体を休めろとみんなに言われるけど、きっと家に帰ったほうが休まらない。何日も眠ったままのAを置き去りにできないし、ひとりで仮眠室に行ったって眠れるとも思えない。
名取「……なぁ、怒ってる?」
「…………」
名取「ごめんな、ふつうに産ませてやれなくて。」
返事なんかない。目も開けないし、クスリと笑うこともしない。それでも、聞こえてんじゃねーかなってずっと話しかけてる。普段は無愛想だと怒られる俺が。何も返ってこないAとの会話だけは、何故か続けられる。
あれから、救助されたAは翔北に運ばれ、一命を取り留めた。それからすぐに帝王切開となり、無事に子どもも生まれた。
名取「今日さ、ヘリで子どもが運ばれてきたんだよ。」
「……………」
名取「ママ、ママ、ってずっと呼んでてさ。やっぱ親子ってすげーのな。意識も朦朧としてんのに、親のことずっと呼んでんの。」
「……………」
名取「俺らもさ、大事にしような。……なぁ、Aが守ってくれたおかげで、赤ちゃん助かったんだよ。」
細い指を、そっと握る。
一生守ってくって決めたのに、こんなことになって。Aにまた生死を彷徨わせて、俺はほんとにどうしようもない。いつもいつも守られてるのは俺のほうで、助けられてばかり。
名取「……名前どうしような。」
「……………」
名取「何個か考えてんのあったじゃん。Aみたいに、みんなに愛される、優しい子に……」
ここまで言っといて、急に恥ずかしくなる。
何言ってんだ俺。いつもなら絶対言えないこと。こんな時だから、本音が出てくるのかもしれないけど。
伊野尾「名取先生、」
山田「ほら。食べないと持たないよ。」
コンビニの袋をぶら下げて病室に入ってきたのは、山田と伊野尾。このままだと泣きそうだったから、助かった。
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しゅあ(プロフ) - 初コメ失礼します!もうハッピーエンドで安心致しました。うるうるしながら最終的に号泣でお話読んでました!最後の救命メンバーからの一言には少しクスッとしてしまいました(笑)本当にこの作品作って下さりありがとうございました! (7月23日 0時) (レス) @page50 id: d9ff4faa7c (このIDを非表示/違反報告)
asumin110(プロフ) - 多分初めてコメントをすると思います!既に何回か読んでます!いつ読んでも感動しますし引き込まれます!山田先生も好きだったんじゃ…?って毎回思うのですがそこはもうそう思ってしまっていいのでしょうか(^ ^)?わら 続編書く気になりましたら楽しみにしています! (2022年5月22日 1時) (レス) @page50 id: 310d1e6e98 (このIDを非表示/違反報告)
う - 復帰するお話が見たい (2021年4月18日 2時) (レス) id: 5513b83dfa (このIDを非表示/違反報告)
知念菜々(プロフ) - 完結おめでとうございます!!続編で育休が明けて病院に復帰する話が見てみたいです! (2020年2月9日 16時) (レス) id: 70738b0893 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーか - 最後、なにがあっても幸せな形で終わる、です!誤字りました、、すいません、、 (2019年11月17日 23時) (レス) id: db28430fd5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むぎ | 作成日時:2019年1月19日 12時