010 バイバイ ページ10
.
そんなこんなで、無事に救命のみんなへの挨拶を終えて病棟を出た。玄関のところまで彼が見送りに来てくれて、まるでしばらくのお別れみたいで急に寂しくなる。いつだって連絡は取れるし、会おうと思えば会える距離。それなのに押しつぶされる心は、それだけ彼を求めてる証拠なのかな。
名取｢悪いな、せっかく早上がりなのに。｣
岡本｢全っ然。俺こそ、早く名取先生の代わりできるように頑張ります。｣
ニコニコと微笑む岡本くん。少し垂れた目尻がキュートなこちらのフェローくんは、やっぱりまだまだ初々しくて。恥ずかしげもなくそんなことを口にする岡本くんに、彼のほうがなんだか恥ずかしそう。
名取｢じゃあ、頼むな。気をつけて。｣
岡本｢はい。｣
しっかりと返事をした岡本くんが、彼から荷物を受け取る。わたしもバイバイしなきゃと彼に近づいたはいいものの、どうお別れしていいのかもわからず戸惑って。
名取｢ちょ、なに。どうした。｣
｢………バイバイ、｣
お、おう……って突然近寄ったわたしに彼も戸惑っている様子。だから、何となく彼の手を取ってそっとお腹に当てた。
名取｢、｣
｢バイバイって。がんばってね、パパ。｣
恥ずかしそうに瞬きをしている彼が可笑しくて。なんだよ…って口先だけで呟いている彼に、何のこと？みたいな顔をして、じゃあねと笑った。
名取｢ゆっくり休めよ。｣
ぽんぽんって頭に手を置いて、くるりと振り返って病棟のほうに歩いていく後ろ姿。最後まで見送ってくれないのが彼らしい。恥ずかしいのか、寂しいのか。青いスクラブが小さくなるまで見ていたのはこっちのほうだった。
岡本くんがいる前で頭を撫でるなんて、それだけでも驚いたのに。それくらい彼も寂しいと思ってくれているのかと。
岡本｢じゃあ、いきましょうか。ここまで車回してきます。｣
｢うん、ありがと。｣
そう言って、わたしの荷物を両手にパタパタと駆けていく岡本くん。可愛らしい顔をして、意外にも大きな背中。海外にいた時間が長くって、未だにぎこちない言葉遣いも微笑ましい。
彼とは正反対だけど。その優しさと温かさで、彼と共にたくさんの命を救ってほしいな。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「Hey!Say!JUMP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やまりん。 - すごく良い話で、読むのが楽しみです！更新頑張ってください！ (2019年1月17日 2時) (
レス) id: 09cc536070 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 更新待ってます！！！ (2019年1月13日 14時) (レス) id: 67369f46c8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - おもしろすぎますほんとに！！！！ずっと更新待ってます！ (2019年1月12日 13時) (レス) id: 89484a4688 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - おい芹沢ーやめろーー 失礼しました あけましておめでとうございます！今年も更新を楽しみにしています(^^♪更新頑張ってください！！ (2019年1月1日 10時) (レス) id: 31e5093717 (このIDを非表示/違反報告)
ruru(プロフ) - こんにちは、いつも楽しみに見ています。更新待ってます。 (2018年12月27日 16時) (レス) id: 2b114bfedf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：むぎ
| 作成日時：2018年8月12日 19時
