037 ごはんの匂い ページ37
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もう知らない、と足早に倉庫を飛び出した。
追いかけても来なければ、去り際にかけられる言葉もなく。早くこの冷たい空気の中を抜け出して、ひとりになりたいと思った。
白石｢あれ、もう帰っちゃうの？｣
｢あ、はい。お邪魔しました。｣
差し入れありがとね、ってにっこりと笑う白石先生。無理やり微笑んで、そそくさと逃げるようにエレベーターに乗り込んだ。と、同時に襲う吐き気。なにこれ。なにこの匂い。密閉されたこの空間に充満するのは、カレー？病院のエレベーターなのに、どうして……
もぐもぐ、もぐもぐ。
わたしより先に乗っていた女の人が、後ろでカレーパンをかじりながらスマホをいじっている。病院のエレベーターで、あんまりそういうの……
｢っ、｣
あんまり得意じゃない。あんなに好きだったごはんの匂いも、つわりが始まってからだめになって。こうしてカレーの匂いを嗅ぐだけでも、途端に。
｢え、大丈夫ですか？｣
ヘナヘナとしゃがみ込んだわたしに、カレーパンを食べながら声をかけてくれたその女の人。でも意識の半分はスマホの画面に行っていて、こっちを心配しているとは言えないような感じだけど……
身なりからして、ナースだよね。でも知らない人。胸元の名札には、｢芹沢美波｣と書かれている。セリザワさん……誰だろう。
芹沢｢立てますー？｣
｢あ、あの………大丈夫です、｣
こんな状態で大丈夫なんて、余計に心配かけちゃうかな。そう思ったけど、エレベーターはグングン下がって、気がつけば１階の外来フロア。無理やりにでも立ち上がって歩こう、そう決心してぐっと力を込めようとした時。
スーっと開いた扉の隙間に見えたのは、岡本くん。
壁にもたれ掛かってしゃがみ込んでいるわたしを見つけた彼は、目を見開いて駆け寄ってきてくれる。それでもサクサクと音を立てながらカレーパンを食べ続ける彼女。１階に着いたことに気づいてないのかな。早くその匂いから離れたいのに。
岡本｢Aちゃん？大丈夫？｣
眉を下げて、心配そうに覗き込んでくれる岡本くん。
なぜだか涙がこぼれそうで、必死に堪えた。
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やまりん。 - すごく良い話で、読むのが楽しみです！更新頑張ってください！ (2019年1月17日 2時) (
レス) id: 09cc536070 (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 更新待ってます！！！ (2019年1月13日 14時) (レス) id: 67369f46c8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - おもしろすぎますほんとに！！！！ずっと更新待ってます！ (2019年1月12日 13時) (レス) id: 89484a4688 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - おい芹沢ーやめろーー 失礼しました あけましておめでとうございます！今年も更新を楽しみにしています(^^♪更新頑張ってください！！ (2019年1月1日 10時) (レス) id: 31e5093717 (このIDを非表示/違反報告)
ruru(プロフ) - こんにちは、いつも楽しみに見ています。更新待ってます。 (2018年12月27日 16時) (レス) id: 2b114bfedf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：むぎ
| 作成日時：2018年8月12日 19時
