恋しくて恋しくて。 (ページ42)

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042 行くの行かないのページ42

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教室のドアを閉めた大ちゃんは、何も言わずにわたしの制服を整える。先輩に途中まで外されたボタンを、ひとつひとつ丁寧に戻して。

大貴｢…………バカだね。｣

｢……ごめん、｣

大貴｢無理やりだったって、わかってたのにさ。｣

その申し訳なさそうな声で、さっきの言葉は大ちゃんが自分自身に向けたものだったんだと知った。

大貴｢…………彼氏じゃないんだよ、俺。｣

｢………｣

大貴｢なのにさ、他のやつにそういうことされんの、すっげー嫌なの。どうしたらいい？｣

そんな問いかけ、わたしには答えられない。ただ黙って大ちゃんを見上げる、時間が止まったようなこの数分間。元通りになった制服を見て、少しだけ口角をあげて。大ちゃんはまた無言のまま、わたしの手を引いた。

心臓の音、伝わってるかな。嫌だって今叫んだら、また嫌われちゃうかな。そう考えると口がパクパク動くだけで、声にならない。言いたくて言えないこと。今日ばかりはもう無理かもしれないのに………。

大貴｢………っんだよ。｣

｢ごめん………、｣

靴に履き替えて、引っ張られそうになった手を、今度は振り払ってしまった。どんな顔するか、どんなこと思うか、全部わかってたのに………。

大貴｢とりあえず送らせて。｣

｢やだ……。｣

大貴｢何？きらいになった？｣

｢ちがう、けど………｣

大貴｢じゃあ何。｣

｢んっ、………ごめんね、大ちゃ…っ｣

大貴｢泣くなよもう………行くの行かないのどっち。｣

振り返って、泣き出したわたしを見て呆れた。一瞬で察知したのに。行くの？行かないの？って。

そんなの｢行かない｣に決まってた。のに……。

｢…………いく。｣

大貴｢ん。じゃあ早くして。｣

わたしが、バカだったの。

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