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「あれはアンタの素質が垣間見えた一戦だった
いうなればオレの人生、もっと言えば命がかかってたようなもんだ
それをまあ初心者のAさんが勝っちまうんだからな」
……確かに、今思い返せば恐ろしいことを成したものだとぞくぞくしてしまう。
二度と体験したくないけれど。
「要はあれの繰り返しさ
賭けているのは点棒や金なんて軽いもんじゃない
時には自身の命さえ賭けちまうこともある」
アンタにそれができるのか?と言わんばかりの表情だった。
……無理、と言われるはずだ。
私は今までのアカギさんの闘牌を全て見ているわけじゃない。
過去だってそう知らない。
知っている限りでは大金のかかった博打打ちだけど、知らないところでは命を賭けていることもあるってこと。
──到底、及ぶはずもない。
その覚悟がなければ。
そう思うと、途端にアカギさんが遠くなって見えた。
返す言葉もなく、ただうなだれる私。
しゅんとした様子を見かねてか、アカギさんが口を開いた。
「Aさんはオレの麻雀を上手くて強い、って言ったけど
Aさんの麻雀も十分上手だよ」
強いかどうかは別として、と小さく付け加えて。
「へ……」
「変にひねくれてなくて、素直な打ち筋……
読みやすいといえば読みやすい
分かりやすいといえば分かりやすいが、
オレはアンタの打ち回しが好きだぜ」
「!」
唐突に飛び出した『好き』という言葉に、思わず顔を上げた。
「ほらな、分かりやすい」
ばっちり目が合ったアカギさんは、にやりと笑っている。
「〜〜っ謀りましたね、アカギさん!」
「クク……どうかな
ともあれ、だ
オレの麻雀に追従するのもいいけど、アンタなりの麻雀を模索してもいいんじゃないのかね」
そう言って、アカギさんは席を立った。
──好きだ、やっぱり。このひとのことが。
たぶん、アカギさんとこんなに話をしたのは初めてかもしれない。
それに、あんなに私のことを分かってくれていたなんて。
胸のあたりがむずがゆくなって、どきどきして、やっぱりもう少し一緒に居たいから。
数歩先を行くアカギさんを、そっと追いかけた。
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南南東(プロフ) - 一気読してしまいました。アカギとのやり取りの一つ一つが素敵です!!更新待ってます! (2022年5月11日 0時) (レス) @page21 id: 74d17b21fe (このIDを非表示/違反報告)
唯 - 初めから最新話まで、一気に読んでしまいました!♪ アカギさん初め、他のキャラクター達の人物背景も崩れてなくて、展開もキュンキュンしたりして、本当に夢中で読んでいました。更新楽しみに待っています。最近は、冷え込む日も多いので、お体には気をつけて下さい。 (2020年1月20日 18時) (レス) id: a44ec662f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:戦犯にわか | 作成日時:2019年12月22日 21時