彼女はどんな人? ページ6
「綺麗な人だったなぁ……」
Aが立ち去った後、善逸は胸の前で両手を重ねてほぅと感嘆の息を漏らした。
そんな善逸に伊之助は「何言ってんだ?アイツ全然強くねーぞ」と言う。
「はぁ〜!?強い弱いの話じゃねぇっての!これだから田舎者はさぁ!」
「アァン!?顔こそどうでもいいわ!!」
「まぁまぁ、もうそこまでにしなよ」
炭治郎が間に入っても、善逸と伊之助は言い争いをやめなかった。
果ては全く関係のない話題にまで行きついて、炭治郎は肩をすくめる。
再びAが立ち去って行った方向に目を向けるが、当然のことながらAの背中は既に見えなくなっていた。
(AAさんか……氷柱と言うぐらいだし、氷の呼吸を使うのかな)
控えとは言え柱の同等の扱いを受けている人だ。
共に戦う機会は多くはないかもしれないが、また会えたらいいなぁと炭治郎は思った。
しかし、炭治郎が思っていた以上にAと会う機会は何度も訪れた。
Aは定期的に蝶屋敷に訪れては、炭治郎らの回復具合を気にしていた。
お見舞いだと言って、美味しいお菓子を持って来ることもあれば、鬼殺隊の様々な事項について教えてくれることもあった。
そんなAは炭治郎らにとって…。
「すごくいい先輩だなって思ったんです」
しのぶに回復具合を診てもらっていた炭治郎は、ふとAのことを思い出して、そのことを話した。
すると、しのぶは目を瞬いて「Aさんと面識があったんですか?」と小首を傾げる。
「え?だって、Aさんって蝶屋敷によく来てますよね?」
「……そのようなことは、ないはずなのですが………」
「しのぶさんがいない時間帯に来ることが多いから、すれ違ってるのかもしれないですね」
炭治郎の言葉にしのぶは「そう…ですね」と答えた。
「ですが、竈門くんから聞くAさんのお話はなんだか…私の知るAさんとは違っていて不思議ですね」
「そうなんですか?」
「少なくとも、私はAさんが笑っているところなんて見たことがありません」
今度は炭治郎が目を瞬く番だった。
そんなはずはない、と炭治郎は思う。
炭治郎らの見舞いに訪れるAは、とにかく愛想がよかった。
笑わないなんて、よっぽどしのぶとAは相性が良くないのだろう。
(人間関係は複雑なところがあるって言うしなぁ……)
気にしても仕方ない。
そう思い直した炭治郎は、それ以上この話題を口にすることはなかった。
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2021年1月7日 15時