検索窓
今日:25 hit、昨日:34 hit、合計:72,983 hit

運命 ページ43

それから、Aは今までの記憶を頼りに鬼殺隊の一員として活動した。

Aが鬼殺隊のために出来ることはたった一つだ。
本来なら重症を追うはずの隊士を助けること、それが結果的には鬼殺隊の戦力を守ることに繋がる。

出来ることなら死者を出さないようにしたいところだが、それが出来るなら最初からAは膨大な時間を掛けて煉獄を救う道を探したりなんてしない。
つまるところ、死者は救えない。
人間には最初から決められた寿命がある。
繰り返しなんて、それを分かった上での愚行でしかない。

それこそ、常人には理解しがたい時間をかけて何度も繰り返し続けているAには、数々の鬼との戦闘記憶がある。
たとえ、異能を持つ鬼と会い見えたところで、血鬼術を見破ることもその対処法もAには分かっている。

人は、それを最強と呼ぶのだろう。
しかしそれは、決して生まれつきのものではないし、Aは過去に何度も多大な代償を払い続けている。
それは、身体的な負傷であったかもしれない。
それは、精神的な摩耗であったかもしれない。
どちらにせよ、Aは万能なんかではない。

「万能に生まれていたら、煉獄さんのことも簡単に助けることができたのかな……」

その日も、Aは任務を終えてどっと疲れた身体を布団の上に沈めた。

耀哉は決してAに無理を言うことはなかったが、Aは耀哉に何を言われなくとも勝手に任務へ赴くこともあった。
それしか、Aが恩を与えてくれた耀哉に対して出来ることがないのだ。

元々、剣技の才もなかった。
むしろ、煉獄が殉職するまでは真剣を握ったこともなかったぐらいだ。
煉獄を助けたい、ただその一心で剣を握った。
どれだけ才能がなかったとしても、何度も繰り返している内に自然と経験値は上がっていき、周りから怪しまれない程度には鬼殺が出来るようになった。
それでも、まだまだ足りないのだが。

ごろん、と寝返りをうって目を閉じる。
Aが死ぬはずの人間を助けられないことと同じく、人の寿命を縮めることもできない。
それは、煉獄に斬りかかったときに分かったことだ。
もしもあのとき、煉獄を斬ることが出来たなら、Aは希望を持ってまた繰り返すことが出来たかもしれない。
それでも、斬ることは出来なかった。
Aにそんなことが出来るはずがなかった。

気持ちの面でも、運命という意味でもそれは出来ないのだ。

そうしてAは、深い眠りに落ちて行った。

不変→←共有



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

この作品にコメントを書くにはログインが必要です   ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2021年1月7日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。