経験則 ページ41
昨日以降の流れは、いつもと同じだ。
Aは耀哉の遠い親戚として柱の面々に紹介され、今後は鬼殺隊の隊士として活動していくことになる。
それから、煉獄が無限列車に乗り込むまでの日々を、どうにかして運命を変えられる方向に持って行くことが、Aの成すべきことだ。
とはいえ、何をどう変えれば煉獄の運命が覆せるのかについては、何ひとつ手掛かりがない。
ただ、繰り返して行く中で分かったことは、耀哉以外の人間に打ち明けて助けを求めることは、無駄であるということ。
そして、無限列車に乗ろうが乗らまいが、煉獄は必ずあの夜に命を落とすこと。
この二つは確実だった。
Aだって、ただいたずらに繰り返し続けてきた訳ではない。
それこそ、無理を承知で無限列車の任に柱全員を参加させて欲しいと頼み込んだこともあった。
しかし、こちらに圧倒的な戦力があったというのに、煉獄の死が覆ることはなかった。
あの日、あの夜の猗窩座には鬼殺隊がひとつになっても勝てやしないし、むしろ今後の鬼殺に影響を及ぼすほどに、隊の戦力に傷を付けるという結果となった。
それ故、その回はAが鬼殺隊を崩壊させようとしたのではないかと疑いがかかって終わりを告げた。
だからこそ、Aはその失敗を踏まえて極力この件について他者には口外しないと決めている。
そして、煉獄を無限列車の任から外すように願い出たこともあった。
この時は、確かに煉獄は無限列車に乗ることはなく、炭治郎らが下弦の壱を討伐し、朝を迎えることが出来た。
しかし、別の任務へと赴いていた煉獄の前に猗窩座が現れ、結果は同じだった。
乗ろうが乗らまいが、運命は変わらない。
むしろ、夜明けよりもずっと前に煉獄が命を落としてしまうという結果だった。
それが、長い旅路の中で分かったことだった。
だからこそ、Aは繰り返す度に様々な方法で煉獄の死を覆そうとしている。
死から避けることが出来ないのであれば、せめて夜明けまで煉獄が致命傷を負わなければ勝算があると思った。
そして、夜明けまで最も長く煉獄が生きている場所が無限列車である。
そのため、Aは無限列車での戦闘の際に煉獄の邪魔立てをした。
少しでも長く、猗窩座との戦闘を遅らせるために。
しかし、今のところどれだけ時間を稼いでも、煉獄が夜明け前に致命傷を負うことを、避けることは出来なかった。
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2021年1月7日 15時