200人の命よりも ページ33
Aは無限列車に乗っていた。
隠し持った刀を片手に、連結部分に佇むAは流れる景色を見つめる。
虚な瞳が夜の闇を映し出した。
しばらくの間そうしていたが、突然列車が大きく揺れ動いた。
Aが車両に入り込むと、そこには煉獄がいた。
煉獄はすぐにAの姿に気が付いた。
「Aか!君もお館様からの御命令か!」
「あぁ、そんな感じですね」
車内は既に鬼からの攻撃を受けているようで、大きなミミズのような物体と煉獄が斬り合っている。
Aは大きく一歩を踏み出し、煉獄に近付いた。
「っ!?」
既視感があった。
煉獄に斬りかかってくるAの姿は、どこかで見たような景色だった。
それは確か、いつか見た夢の中での出来事だったはずだ。
「どういうつもりだ!今ここで君と手合わせする時間などないぞ!」
「手合わせじゃありませんよ」
「なぜ邪魔立てする!君は鬼殺隊だろう!」
「申し訳ありません。ですが、引くつもりはないですから」
Aはそう言うと、再び煉獄に斬りかかった。
煉獄はAの刀を受け止めるが、そうしている間にも車内の乗客は攻撃され続けている。
細かな斬撃を入れたからといって、完全な安全を保証することは出来ない。
「君は乗客を見殺しにするつもりか!」
「はい」
「意味が分からない!何がしたいんだ!」
Aの瞳はいつも以上に冷たかった。
冷たく突き刺さるような視線に、煉獄は目を細める。
受け止めた刀も重たく、とても正気とは思えなかった。
対するAもまた、煉獄が本気で立ち向かってくることを分かっていた。
それを相手取ることの難しさも理解していたが、それでも引けない理由がある。
「私には200人の命よりも優先したいものがあります」
真っ直ぐな瞳だった。
だからこそ、煉獄は彼女とは相容れないと思った。
「君の考えは到底理解できんな」
煉獄のこめかみに青筋が浮かび上がる。
Aの刀を弾き飛ばし、背後に回り込むと首に手刀を落とした。
一瞬にして、Aの意識は奪われる。
煉獄はAとは違って仲間を殺そうとは思わないが、意識がなくなったAを車両の片隅に座らせた。
煉獄とAとでは根底が違いすぎる。
そのことをまざまざと痛感した煉獄は、再び車両内に斬撃を繰り出し始めた。
137人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2021年1月7日 15時