もう一人の柱 ページ3
「ったく、お前はよぉ〜!!」
「す、すみませんでした…」
揺れる背中の上で炭治郎は何度目かの謝罪の言葉を口にしていた。
炭治郎を背負いながら走る後藤だけでなく、その後ろから禰豆子の入った箱を背負って走る隠の目からは、明らかな怒りの感情が見て取れる。
目元だけしか見えていない故か、その怒りはより増幅された状態で炭治郎の胸に刺さった。
その原因は言うまでもなく、先ほど炭治郎がかけられた柱合裁判にあった。
柱の存在を知らなかった炭治郎の無知故の行動であっても、柱の脅威を知る隠の2人にとっては到底許せるはずもなく、炭治郎を蝶屋敷へと送る道すがら、2人は執拗に炭治郎を責め続けた。
炭治郎は、何の落ち度もない隠2人に対しては申し訳ないと思いつつ、それでも最愛の妹である禰豆子が3度も刺された件に関しては許していなかった。
もしも、今後あの男と再会する機会があったとしたら、絶対に頭突きをすると心に固く誓う。
「あ〜くそっ!柱チョーこえぇよ!」
「あの……そんなに怖いんですか?」
「これだから新人はよぉ!どう考えても怖ぇだろ!」
そう言われて炭治郎は先程の面々を思い返す。
確かに、曲者揃いというか個性際立つ顔触れであり、それに似合う堂々とした面持ちだったとは思う。
1人1人の顔を思い出しながら、ふと炭治郎は1人の顔を思い出して「そういえば」と口にした。
「1人だけ室内にいたのはどうしてなんですか?」
炭治郎の言う通り、あの場には柱と呼ばれる9人の隊士がいたのだが、もう1人屋敷の中に隊士がいたのだ。
あの場にいながらも一言も発しなかったことから、柱とはまた違う立場の隊士なのだろうと思ったが、意外にも後藤は「あぁ、あれは氷柱のAA様だな」と答えた。
「あの人も柱なんですか?」
「あー……まぁ、厳密には違うっつーか何つーか、柱になる資格はあるんだが、それだと多すぎるんだよなぁ」
「多すぎる…?」
「柱は人数が決まってんだよ。基本的に欠員が出てないことの方が珍しいし、上限超えちまったのも異例なんだと。だから、1番最後に柱の資格を持った氷柱様は控えみてぇに扱ってるんだとよ。俺たちも詳しい規則は知らんが」
後藤の説明に炭治郎は「へぇ」とこぼす。
優秀な隊士が優遇されるということは、先程の柱合裁判でよく分かったつもりだった。
しかし、その顔触れに並ぶにもまた難しい規則があり、それは炭治郎にとっても高い壁のように思えるのだった。
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2021年1月7日 15時