無題 (ページ4)

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「こっちおいで」

ポンポン、と自分の隣を叩いて私を誘導する彼は、

いつも会社で見る姿とは全く別人に見える。

「お水飲む？」

小さく頷いて、彼からお水を受け取る。

その時に少しだけ触れた指先ですら
熱を持って、ドキドキして。

「いやめっちゃこぼれてるって笑」

緊張のせいで上手く飲めなかったのか、

ひんやりとした感覚が顎から首をつたって、服に染みる。

「あーあーもう、」

「こうゆう一面もあるんすね、Aさん」

「意外」

そう言いながらタオルを取ってきて私に手渡す。

『ありがと、....やば、結構濡れた』

「脱いじゃいます？」

その言葉に動揺する暇もなく、
そう言って私の横に座り直して、

「せっかくこうゆうとこ来たんやし」

佐野くんの顔が、ゆっくりこっちに近づいて、

思わず目を閉じる。

「....拒否らんねや」

彼の吐息が耳元をかすめた。

" ......冗談 "

" ぼく彼女いるんで "

そう囁いて立ち上がった彼は、

「風邪引くんでちゃんとシャワー浴びて寝てくださいね」

「あんまこうゆうことしちゃだめっすよ」

いつもの笑顔でポンッと私の頭を撫で、

上着を羽織った。

fin