よしくん ページ11
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カチャリ、とゆっくりその見慣れたドアが開いて
「.......ほんまに来てくれた」
少しほっとしたような、
でもどこか哀しげな目をこちらに向けて。
「寒かったやろ、ごめんな｣
「入って」
そう言って優しく私の腕を引く。
ノーセットの髪に、スウェット姿の正門くん。
ちょっとだけ痩せたのかな。
少し前までは、当たり前だった空間。
私たちはもう、別れている。
「なんか飲む？」
『...ううん、いらない』
「......そか」
今までみたいに、2人で並んでベッドの縁に座る。
『.....なんで、電話してきたの』
「来てくれるかなって思ったから」
『来たくなかった』
「うん、でも来てくれてる」
色んな感情がぐちゃぐちゃになりそうで、
怖くて、
彼の方が見れない。
「Aちゃん」
彼の手が私の髪に触れようとして、
私はその手を掴んで止める。
『だから私には、』
「わかってる」
「.....今日は彼氏さんのところ行かんくてよかったん？」
『会うよ、この後、』
「そうなんや、いいなあ」
彼の方を見る。
何を考えているのか、全く読めないその表情。
「.......やっと目合った」
優しいその微笑みも、
今は少しヒヤリとして、心臓がどくどくと音を立てる。
「.......相変わらずまつ毛長いなぁ」
私の頬に触れられた指先が冷たくて、
思わず肩が揺れた。
「...........どうしたん」
「........怖い？」
にっこりと上がった口角。
光のない目。
そのまま顔を引き寄せられ、唇が触れる。
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作者名：無名 | 作成日時：2024年1月5日 23時
