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『…あれ、』

「どした?」

『七瀬、私の左目って今開いてる?』

「うん、開いてるけど。…え、まさか」

『わんちゃんある、どーしよ覚悟してなかった』





「そう…ですね、失明しています」

『あぁ。あー、そうですか、』



後日、一応病院に行くと案の定そう言われた


20歳の年の末。
ついに左目が使えなくなった




何も考えたくない
とにかく逃げ出したい一心で、とりあえずどこかに向かう、今すぐに取れるチケットを買い、夜行バスに乗り込む
気が付いたらそこは東京ではなかった


『…どこでも良かったけど、なんで三重?』



自分がなんでここにいるか、はっきりと覚えてる訳では無い
ただ、東京という息苦しいところから逃げ出したかったのは覚えている
とりあえず、誰かに連絡しないと

そう思って開いたLINEには姉と妹からの通知が絶えなかった


2人には申し訳ないことをした
私は七瀬だけに連絡を取り、2人は既読さえ付けなかった



そしてもう1人、よく連絡を取り合う知り合いに電話をかけた



『もしもし、今時間ある?』
『ちょっとさ、家に泊めて欲しいんだけど』

《は?なに急に、笑》
《何を言うとる?お前今東京ちゃうんけ》

『色々あって、今三重にいる』


話している間に自然と涙が出てくる
電話の相手はそれを察し、何も聞かなかった

《…姉召喚でいいか?どこおるか現在地送って》

『ありがと、だるまくん』




その後、だるまくんのお姉さんに車で迎えに来てもらって、だるま家に転がり込んだ

だるま家族には本当に良くしてもらって、半年も住まわせてくれた
本当に感謝しかない
4月の誕生日も祝ってくれた


私は一緒に生活する間にだるまくんの事が好きになっていた
先がない私に好きになられても困るかなって思ってる

けど話し合うと全くそんな事はなかったらしい
結局私たちは恋人同士になった

だるまくんが東京に引っ越した時は私も着いて行くように東京へ戻った



「さすがに引っ越し手伝えよ?」

『任せて。力はある』

「左目が見えやんだけか!w」

『だるまくんだけだよ、私の失明をネタにする人』




同棲みたいな生活が半年続き、私は私の家に帰った
一緒に住んでいる祖父からは雷が落ち、妹からは泣き付かれた

22歳になる前の冬
心配してくれる家族が私にはまだいる事を実感した

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リリィ(プロフ) - 私こういう作品が本当に好きなんですけど,自分には書けないし書く人もあんまりいないしな…。って感じだったんです。この作品を見つけたとき本当に嬉しくて,内容でも感動しました。てとらさんの作品全部大好きです。 (4月2日 15時) (レス) @page44 id: eee55a43b8 (このIDを非表示/違反報告)
皐月(プロフ) - こういう系の話をあまり見た事が無かったのでどんな感じなんだろうとワクワクしながら見ていました。最終話まで読んでもう涙が溢れてきました😭 素晴らしい作品を作って下さりありがとうございました。 (2月27日 21時) (レス) @page48 id: 85652cc9d9 (このIDを非表示/違反報告)
KIRA(プロフ) - 最後まで読んだんですけど涙が止まりません(笑)こういう話って弱いんですけどついつい読んでしまうんですよね(笑)お気に入りの作品が増えました。素晴らしい作品をありがとうございます。 (1月3日 23時) (レス) @page48 id: 4bc181a3bb (このIDを非表示/違反報告)
ちのろく(プロフ) - 読み終わったあとに涙が溢れだしました。素敵な作品をありがとうございました。 (11月14日 0時) (レス) @page48 id: f5480ea879 (このIDを非表示/違反報告)
てとら(プロフ) - ひぃさん» 感想ありがとうございます。思い付きのお話だったので心に刺さってくれたのは本当に嬉しいことです。またいつか新しいお話も書こうかと思っているので楽しみにして貰えるととても嬉しいです! (10月27日 11時) (レス) id: fa8c7273fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てとら | 作成日時:2023年1月20日 18時

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