空の棺【降谷零】

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「阿呆な男」





この言葉を聞いて、俺は拳銃を突きつけてやりたいと、引き金を引き今すぐにでもアイツの後を追わせてやりたいと思った。

阿呆な男？誰が。アイツが？

ふざけるな。アイツはこの国のために命を落としてでも尽くした立派な男だ。
お前に馬鹿にさせる筋合いはない。お前に価値を決められたくもない。





怒りを必死に抑えながら書類を作成する。
敵対組織についての情報だ。

作成を終えようとしていた頃、ディアブロが呟いた。
「疑うっていうのは、予想以上に疲れるのよ」と。ああ、嫌という程知っている。
疑い続けてきたこの人生で学ばざるをえなかったからだ。
けれどどうしてそんな事を考えるのか。




この女がよくわからない。
信じたかったとでも言うつもりか？こんな組織に所属していながらも、呑気に街を歩く市民のように、平凡な毎日を送りたかったのだと？


……それこそふざけている。








何人もの命を踏み台にしてきたんだろう。


その地位を手に入れるのにどれだけの命を亡き者にしてきたんだ。お前が今更弱音を吐いたところで、迎えに来るのは死神くらいだろう。








それなら、その命に責任を持て。
せめて死んでいった人間に、その命が無駄ではなかったのだと思わせてくれ。









伝わるはずのない心の中をかき消すように珈琲を飲み干した。あまり、美味しくはない。

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