18:「拒否されるのなら」 ページ19
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『無理にでも引き止める…なんて、さすがにしないのね』
「…してもいいならするけどな。
それよりもコッチの方がお前には効くだろ?」
『ええほんと。よくわかってる』
始らはひとしきり笑いあった後に目を合わせた。
お互いの瞳に映る自分の顔が、ほんとり赤に染められている。ほんの少し見上げた先にある始の顔を、手を伸ばせば触れることのできるAの小さく白い肌を、愛おしそうに望むお互いの目を、自分の目に映す。
惹かれるように始はAの頬に触れた。
そっと、ゆっくりと、優しく、包み込むかのように。幻のように散っていったあの夢と重ねて、今度は離さないと縛り付けるかのように、腰に手を添えた。
一気に近づいた二人の距離に、Aは顔を背ける。
けれど、背けた先にある鏡が、全てを映していた。
『…無理やりは、しないんじゃなかったの…?』
「拒否されるのなら、しない。」
『……だったら…、』
首筋に息があたる。それを避けようとするが、腰に添えられた手がビクともしない。
鏡越しに見える始の目が、Aをじっと見つめている。獲物を捉えた獣のようだと、Aは体を固くした。
「なにも、言わないのか?」
…言わないのではない、言えないのだ。
その言葉すら、音にできなかった。
怖いわけではない。嫌という気持ちが、ただ純粋にないせいだ。
ずっとふれていたい。ふれたかった。ふれられたかった。
なぜならAは始のことを
『………すき…、だった…っ』
その愛に溺れてしまえたらと願うくらいに
愛しているのだから。
19:「愛させてくれて、ありがとう」→←17:「期待に応えてくれたのかと」
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おむ(プロフ) - snowさん» ありがとうございます!初の別れ話だったので私もハラハラしてましたが無事完結できただけでなくこんなにも丁寧に素敵な感想をいただかて私も胸がいっぱいです…。こちらこそ、本当にありがとうございました(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
おむ(プロフ) - ひこさん» ひこさんんん!わ〜!ありがとうございます!始さん推しの方に受け入れてもらえるか不安だったのでこんな風に感想がいただけてとても嬉しいです!(^^)安心しました…。はい!これからもよろしくお願いします(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
おむ(プロフ) - 彩華さん» ありがとうございます!1番と言っていただけてとても嬉しいです…!最後まで読んでくださり本当にありがとうございました!これからもよろしくお願いします!(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
おむ(プロフ) - リラ@低浮上さん» ありがとうございました〜!はい!ご期待に応えられるようこれからも頑張ります!(^^) (2018年9月12日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 完結おめでとうございます。別れ話で始まり、ハラハラしました。皆の愛情の深さ、それに彼女の愛の深さが素敵な話でした。途中、もどかしくて、始さんを密かに応援してました。もう、胸がいっぱいです。素敵な話をありがとう。 (2018年9月12日 21時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おむ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho
作成日時:2018年1月25日 14時