夏の終わりにキスをする【葉月陽】

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『夏祭り…？』




最近、少しの変化を探すのが俺の楽しみだった。




例えば今、俺とA以外誰もいない図書室で話すとき。


前まで「静かに」だとか
「また後でね」とかフられてきた俺の話が

今では読んでいた本を閉じて、目を合わせてくれるまでになった。









ほんの少しの変化だけど、それが嬉しくて


夜もそれは感じているようで、時折嬉しさを表現するかのように菓子を焼いてくる。








「そっ、夏祭り。
一緒に行かね？」



『………私と？』



「それ以外に誰を誘えと」



『え、いや…長月くんとかいるじゃない』



「何が悲しくて男と2人で祭りに行かなきゃいけないんだよ」



『………そ、そうね…？』








「そういやこういう男だったわ」という目を俺に向けるA。

断られるのでは、となにげ緊張してるのだが
そんなことなどAは知らないだろう。








『……夏祭り…』



「なんか用事あったか？」



『そ、そういうわけじゃなくて……その、あまり行ったことがないものだから、』



「……あー」









手帳を出し、7月のページをめくる。

たくさんの正方形の中には少しずつ予定が入っていた。
綺麗な黒字で、記されている。



その中に１つ、新しく赤い文字で三文字が追加された。







「…てことは……」



『___楽しみにしてるね、葉月？』









手帳を口元にあて微笑むこいつのその仕草は



俺を魅了するには、十分すぎた。









___男はそれだけ単純なんだよ。

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