12 ページ12
.
「はー、結構走ったな……
大丈夫か_____
_____ってうわッ」
『わ、たし……っ、運動、にが…っ、苦手…!!』
「わ、わりぃ…」
家につき、屋根の下に入る。
掴んだ手を離すことなく振り返ると、息を上げ必死に呼吸を繰り返すAがいた。
膝に片手を置き下を向いてるから顔が見えなかったけれど、徐々に上がり見え始め
雨で濡れた髪と、唇、頬に自然と目がいき、見入ってしまうくらい、魅惑的な姿が露わになった。
この雨じゃ制服の下は…などと下心からチラリと視線を動かすが、なんとも残念なことに無事だった。
最近の制服はそこらへんの配慮が行き届いてるらしい。( 俺みたいなやつへの優しさは行き届いてないが。)
「とりあえず上がって。
なんか拭く物持ってくるから」
『……お邪魔します』
自分の体を適当に拭き、バスタオルを探す。
幸いなことに一度洗濯しただけの新品があり、それを手に玄関へと戻ると、Aは制服のリボンを外していた。
( 様になるな……
つか、なんか、こう…くるものが… )
『葉月…?なにぼーっとしてるの…?』
「あー、いや…
…よし、目閉じとけよ?」
『うん。』
大人しく目を閉じたAの危機感のなさにため息をつきたくなった。
信頼されてるのか、本当に危機感というものがないのか。前者であることを望むが、どうだろう。コイツのことはよくわからない。
「………思ったより濡れたな、ごめん」
『あのままだったらどっちにしろ……
って、葉月もびしょ濡れ。ちゃんと拭いた?』
目が合った。
少し熱を帯びた瞳が、揺れていた。
咄嗟のことで反応ができなくて、近づいてくるAの腕を目に捉えていながらも、俺はその場から動けなかった。
伸びてきた腕が、俺の肩にかけていたタオルを取り、拭う。
一気に近くなった距離。
ふわりと運ばれてきたAの匂いが鼻をくすぐり、その時やっと足を引いた。
やわらかく、それでいて芯の通った
Aの香りだ。
『風邪ひいたらどうするの』
「…は、いや、そんなの、お前だって…」
『葉月と会うの、楽しみにしてるんだから』
_____ああ、今のはズルい。
「……お前、そういうの簡単に言うなよな…」
『葉月には言われたくない。』
熱くなった顔を隠すかのように、
タオルでAの目を覆った。
98人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おむ(プロフ) - 陣さん» 読んでいただきありがとうございました!楽しんでいただけてとても嬉しいです^_^ (2019年4月27日 13時) (レス) id: 0478855421 (このIDを非表示/違反報告)
陣 - 最後まで最高でした!こういう素敵な作品が増えればいいのに。 (2019年4月21日 15時) (レス) id: 68fd1f4854 (このIDを非表示/違反報告)
おむ(プロフ) - 来栖陽香さん» お久しぶりです!いつもコメントありがとうございます!(^ ^)黒年中との関係性、気に入ってたのでそう言ってもらえると嬉しいです!神がかって…?!あ、ありがとうございます…!!?たくさん読んでくださり本当にありがとうございます!いつもコメント嬉しいです(^ ^) (2018年4月3日 16時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
来栖陽香 - オムラースさんの作品は全て神がかってます!全て読んだ私が保証します。 (2018年4月3日 11時) (レス) id: a805fdd95d (このIDを非表示/違反報告)
来栖陽香 - お久し振りです!いやー流石ですね!陽との関係性はもちろん、新や葵などとの主人公の関係好きすぎて。年中組好きなので嬉しい! (2018年4月3日 11時) (レス) id: a805fdd95d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:おむらーす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho
作成日時:2017年9月4日 14時