ア シ オ ト【水無月涙】

Art.20 ページ20

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部屋中に散らばった絵を、ただぼんやりと見つめていた。



拾わなきゃ、ああでも、何もしたくない。









そうやって数日を過ごして、
音のない日々が、また戻ってきたと私は息を吐く。







慣れていたはずの空間に心地の悪さを感じるのは、涙といた時間がそれだけ幸せだったから。


涙が、私にとってそれだけ大きな存在だから。


たくさんの感情や色、音を 涙が私にくれたから。









『…ぁー、うん……掃除しよ…』









絵を拾い上げるたび、涙との思い出が頭の中を流れる。








___ああ、この絵は涙が好きだって言ってた。


___これは、微妙な反応だったなぁ


___これは確か……涙と、一緒に描いた絵だ。









『……ぁ、はは、なにこれ…
もう、涙の色でいっぱいだぁ………』









ポタポタと頬を伝う雫が、絵に落ちそうになって


必死に拭うけど、止まらなくて








いつからこんなに泣き虫になったんだろう、って
半ば呆れに笑ってしまう。









寝転がった床は酷く冷たくて


落ち着かなくて









気持ちを口に出してしまえば、楽になれる。


けど、そんなことをしたら、今度こそ止まらなくなってしまう。









『…………っ、ここも、もう出なきゃ』









ゆっくりと片付いていく部屋で、これで最後だからと絵を描いた。






それはいつの日か鉛筆で描いた、涙の横顔だった。









さよなら、涙。





もう二度と、君の音は聞かない。

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