flower.13 ページ13
.
暑い日差しの下、
俺たちは郁の応援に来ていた。
「おっ、あの人 美人」
「ちょっと陽！」
ちょうど俺たちの斜め後ろに現れた女性。
その人は郁のいる方向を見つめて、なぜか辛そうに顔を歪ませていた。
「…………なぁ、なんか、おかしくねえ？」
「人のことジロジロ見るのはダメだよ…！」
「いや、わかってるけど………でもほら、あの人」
気分が悪いのか、俯いて目頭を押さえていた。
その様子に気づいた夜が心配そうに見つめて、さらにそんな様子の俺たちに気づいた海や隼までもがその人に目をやる。
酷いようなら声をかけようか____と誰かが言った、その瞬間
開始の合図である空砲が鳴った。
「!!
いっ、いっくん頑張れ……！」
「よっしゃ行けー！」
周りの応援に負けじと声を張り上げる俺たち。
その頃にはもう女の人のことは忘れていた。
1人、2人と抜き
しかしその後が抜けない。
前にはあと、2人。
ゴールまでの距離あと僅か。
「おっしゃ抜け!!」
「頑張れーっ！」
郁は前2人を追い越すことなく、ゴールした。
よく頑張ったと俺たちは拍手を送る。
そんな中、どこからか男たちの声が聞こえてきた。
「あいつってアレじゃね？
ほら、アイドルの。」
「あー、歌って踊れて走れるアイドル？
結局中途半端になんなら辞めりゃいーのにな」
「てかそんな速くねぇじゃん。」
「言えてる」
ケラケラと笑い声が聞こえて、
それは隣にいた夜たちにも聞こえてたみたいで
小刻みに震える俺の拳に、夜は止めるように手を重ねた。
別に、殴るわけじゃねえよ。
そう言うが、夜はその手を離そうとはしない。
顔を見上げれば、悔しそうにする夜がそこにいた。
誰もが、同じ事を考えていたのだ。
『何で君たちに
彼の努力を馬鹿にされなきゃならないのよ。』
凛とした声が、その場に響く。
シンと静まり返った空間は、伝染するように広がっていった。
「………は？何だよお前」
『……人の努力を馬鹿にするのは許せないのよ。
何も知らないからって、勝手に決めつけないで。』
「あ、もしかしてアイツのファンか何か？」
『…………ただの、先輩よ。』
その言葉に、涙がいち早く反応した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おむらーす(プロフ) - snowさん» ありがとうございます！無事完結することができたのも、皆様のおかげです。更新ペースも遅く、面白くない部分が多々あったかと思いますが、少しでも楽しんでいただけたのなら、幸いです！ありがとうございました！ (2017年4月17日 16時) (
レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 初めまして♪いつも大変楽しく閲覧させていただいております。この度は完結おめでとうございます。郁君が、格好良かったし、先輩もどうするのかな？と不安でしたが、良かったです！ (2017年4月17日 15時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
おむらーす(プロフ) - リラ@低浮上さん» いっくんが好きな方にそう言っていただけて嬉しいです！安心しました（笑）ンンンｯ、嬉しいことを…嬉しすぎてしんどいです…(( 舞い降りる、できたらしたいと思います（笑）こちらこそ、ありがとうございました。 (2017年4月16日 19時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
おむらーす(プロフ) - 来栖陽香さん» 心の支え…そんな素敵なことを言っていただけるなんて…ありがとうございます…！舞い降りる、できたらしたいです（笑）私もまた会える日を楽しみにしています。ありがとうございました。 (2017年4月16日 19時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
リラ@低浮上(プロフ) - 大好きないっくんを書いていただき感謝いっぱいです！おむらーすさんの小説はどれも大好きなので、是非また占ツクに舞い降りてください(笑)！ (2017年4月16日 14時) (レス) id: 580b941f35 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おむらーす
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho
作成日時：2017年1月23日 21時
