夢見草【にゃんこ様】 ページ43
.
死にゆく君を
私はただ、側で見守るしかできなかった。
君の隣には葵がいて、桜の木の下で2人の世界が広がっていて
私が入れる隙もなく、ただ私は…
『________ｯ!!』
勢いよく開かれた目。
カーテンから覗く光に目を細め、一旦冷静になった頃に気づく。
冬だというのに身体中にまとわりついた汗と乱れる呼吸
そばに置いていたはずのウサギのぬいぐるみが、床に落ちていた。
( また、あの夢… )
昔、年中組の4人が演じた舞台のDVDを久しぶりに見て以来、ずっとおかしな夢を見る。
そこでは決まって、新が苦しんでいた。
『…………』
呼吸を整えることもなく、寝巻きに適当なブランケットを羽織り部屋を出る。
目的地に着くとインターホンを鳴らすが、反応がない。
不安になり、夢のこともあって冷静さを失っていた私は、開いていたドアを開き部屋に入った。
『新…っ、新……！』
急いで駆け寄ると、そこには不思議な寝癖をつけた彼が、規則正しい寝息を立てていて
よかったとその場でしゃがみこんだ。
『よかった………、新、生きて…』
「なんて恐ろしい事を言う彼女だ…」
『新!!』
ムクリと体を起こした新の胸に思いっきり抱きついた。
すると新は驚きながらもしっかりと抱きしめ返してくれる。
「………どーした？」
『嫌な、夢見て……新が、死んじゃって…でも、私、遠くで見てることしかできなくて……』
夢見草
夢のように美しくも儚く散ってゆく、桜の異名。
誰がつけたものなのか、とても綺麗な言葉だけれど
私にとってはただの恐怖でしかなくて
だって桜は、新の………
「A、大丈夫だ。
お前を置いて死んだりしない。
病気だろうが寿命だろうが、お前を独りになんてしないから、覚悟しとけ。
俺は相当しつこいぞ？」
『……絶対、絶対だからね…
先に逝ったら呪ってやる…』
「物騒だな。」
新は笑いながら私をベッドに引き込み
私の頭を撫で、額にキスを落とす。
「まだ時間あるだろ？」
『……うん』
いわゆる腕枕。
暑く思えるほどしっかりと回されたその腕に安心して、ゆっくりとまぶたを閉じた。
.
「……嬉しかった…なんて言ったら、
性格悪い！って怒るよな。
…悪かった。怖い思いさせて。
もう、大丈夫だからな。…おやすみ。」
また１つ、その白い肌に唇を落とした。
______良い夢を。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 353人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おむ(プロフ) - kokoさん» そう言ってもらえて私も凄く嬉しいです！^_^ 大好きな新を注ぎ込んだ小説だったので、それこそ分かれるかなとも思ってたのですが、そう思ってくださる方が一人でもいてくださるだけで頑張れます！ありがとうござます！ (2019年7月8日 23時) (
レス) id: 40b62768f7 (このIDを非表示/違反報告)
koko - この小説は今まで読んだ中で一番のお気に入りです！ (2018年7月18日 15時) (レス) id: 1c9e26041b (このIDを非表示/違反報告)
おむらーす(プロフ) - 梶寺さん» 本当ですか!?そう言っていただけてとえも嬉しいです…！本編の方は見ていただけましたでしょうか…！そちらも新とイッチャコラ(( してますので、ぜひ！ツキノハナシ。という短編集でも新は活躍中です！笑 よろしくお願いします！笑 頑張ります！ (2017年6月10日 22時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
梶寺 - とっても面白いです！私、新推しなんで、嬉しいし、めっちゃニヤけちゃいます！素敵な小説、ありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2017年6月10日 17時) (レス) id: dd0c26e684 (このIDを非表示/違反報告)
おむらーす(プロフ) - 梨子さん» ありがとうございます！そう言っていただけて本当に嬉しいです…！せいいっぱい頑張ります！ (2017年2月4日 11時) (レス) id: dccc051f5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おむらーす
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=mucho
作成日時：2016年12月2日 19時
