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昼休み、私は自分の席に座り一人で弁当を食べていた。たらこ達は基本昼休みは一緒じゃない、別の誰かと食べる約束があるらしく毎回申し訳なさそうに眉を下げて去っていく。別に一緒に食べたいわけでもないからそんな顔しなくてもいいんだけどな、なんて思いながら甘めの卵焼きを咀嚼する。

やっぱり卵焼きは甘い方が好きだな。

「与川さん!」

ぱ、と顔を上げるとここ数ヶ月で見慣れたクラスメイトの一人がそこに立っていた。

「一緒にご飯、食べてもいいかな…」

『……勿論』

「ほんとっ!?やったぁ、隣失礼するね」

そう言ったクラスメイトは机をくっつけて椅子に座る。

「ずっと話しかけたかったんだけどね、与川さんの周り…ほらたらこくんとかいるでしょ?話しかけ辛くて…」

たらこや焼きパンは女子からの人気が高い。それはきっとフレンドリーだからとか可愛いからだとか、親しみやすさから来てるものもあるんだと思う。まぁ乙女ゲームの世界だし、攻略対象だから人気はあるでしょう、って思ったりもする。
でもどこかの漫画にあるような熱狂的なファン、というのはまだ見かけない。それは私たちが入学してから間もないっていうのもあるけど純粋に彼らに憧れとか人間として好ましく思ってる人が大半だからなんだと思う。どちらかといえばアイドルとかに近いんだろうか。遠巻きに見つめることはあってもたらこ達に話しかけにくる人は多くなかった。
たらこ達の近くにいる私に声をかけてくる人も少なかった。

ヒロインに話しかけるとかじゃないんだ、不思議。
なんで、今更話しかけに来たんだろう。

「っあ、あの!良かったら、お友達になって欲しい、です」

恥ずかしそうに目を逸らすクラスメイトはスカートをゆらりと揺らしながら不安げな瞳をこちらに向けた。

『あはは、私でよければ』

「ほんとっ!?」

ぱっと明るくなった顔に思わず犬を重ねた。
(悪役)に、友達なんて居たんだろうか。眩しい笑顔に思わず目を細めた。


授業中は、現状の整理をするので頭がいっぱいだった。
どう立ち回るのが正解なんだろう、最近そんなことばかり考えている。私はどうしたいんだろう、帰りたい…けど帰り方は?帰れる保証は?帰れなかったらわたしは…

「与川さん」

『っはい!』

「ぼんやりしていたようですが、ちゃんと聞いていましたか?」

『っすみません、聞いていませんでした』

「珍しいですね、もし体調が悪いのなら保健室に行くように」

『はい…』

帰れる、かな

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作者名: | 作成日時:2023年7月3日 21時

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