多分あなたは知らない (ページ6)

今日:1 hit、昨日:17 hit、合計:6,026 hit

五ページ目ページ6

思い出してみればこの世界に生まれ落ちてからもう15年も経つのか。ここの両親も優しいしとても良くしてくれる。幸いにもここまで大きな問題もなく友人もいい人たちばかりで、何不自由ない生活を送っている。
ここまでは。

そう、あくまでここはゲームの世界。そして私は悪役だ。今が分岐点、別に殺されるわけでもないからシナリオ通り進めばいいと思っていたけど、生憎ゲームはヒロイン視点で進んでいたものだから原作の私の立ち回りはよくわからない。
私がこのゲームをやっていたわけじゃないから全てを把握してるわけでもないし、なにより私の知識の大半は妹から教えてもらったことだから…

「A〜！迎えにきたよ」

ぴたりと思考が止まる。
もうそんな時間…？

玄関の扉を少しだけ開けて顔を出す。

『ごめん、まだ準備終わってない』

「え〜でも来ちゃった、入れて？」

「ぁ、お…はよう」

入れてくれるでしょ？と言わんばかりに此方を見つめるたらこと控えめに手を振り挨拶をする焼きパン。

『え〜…』

「だってまだ時間あるよ？」

『じゃあなんでこんな早くに来たの…』

「Aのママさんのご飯食べたくて」

『あのねぇ…』

まだ出会って3ヶ月ぐらいしか経ってないはずなんだけどな……？？どうして家に来るぐらい仲良くなってるんだろうか。

「あら？たらこくんに焼きパンくん？」
『うわ』

タイミング最悪…

「あ、ママさん！おはようございます！」

「おはよう、ございます」

「おはよう、今日はAと登校するの？」

「はい、でも早く来すぎちゃったみたいで……あとママさんのご飯食べたいなーって…えへ」

申し訳なさそうに此方をちらりと見るたらこに思わず顔を歪めた。
確信犯め…

「ふふ、たらこくんは上手ねぇ。上がって上がって？Aもまだご飯食べてないし、一緒に食べると良いわ」

「やったぁ！ありがとうございます！」

「ありがとうございます…お邪魔します」

『ちょっ…私の意見は！？』

「一緒に行くのに待ってもらうのも申し訳ないでしょう？Aも早く準備しなさい」

『母さんたらこと焼きパンに甘すぎ…』

「こんなにいい子たちを邪念に扱う訳ないでしょ、Aと仲良くしてくれているし…可愛いじゃない」

『はぁ…まぁ、良いやつらではあるけど…』

「話なら後で聞くわよ、ほらさっさと準備済ませてきなさい」

『は〜い…』