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目が覚める。
遅刻かと思って勢い良く飛び起きたがどうやらそんな必要はないらしい。目に映る時計は6時を指していた。
『なんだ…』
あと1時間も寝れる、そう思ったけどすっかり目が覚めてしまった。
しんと静まり返るリビングに足を運んでコップに牛乳を入れる。

深呼吸。

閉じた瞼の裏に思い浮かぶのは焦ったような彼女の顔。なんで、どうして?というように呆然と立ち尽くす彼女を思い出して苦笑する。

『そりゃそうだよね』
だって、
『最初のイベントがなかったから』
あれは本当に、びっくりした。

その話は昨日に遡る。

-------------

じりじりと照りつける太陽に思わず目を細める。7月は流石に暑い。
ここに入学して約3ヶ月が経過した。特にこれといった問題もなくゆるやかな日々を過ごしていた。
「Aッ〜!!」

ただ一つのことを除いて。

『たらこ危ない…』
「えへごめん」

そうにこやかに笑う彼にため息が漏れる。この注意は一体何度目だろうか。
女の子のような可愛らしい顔立ちに夏だというのに赤色のマフラー、綺麗な金髪の長い髪の毛。彼を初めてみる人は全員女だと思うだろう。
女子よりも女子らしいこの子、たらこはれっきとした男だ。しかもズボンを履かずご丁寧にスカートまで着ている。それがとても似合っているのだから女子である私としては少し複雑な気分だ。
その問題というのは目の前にいるたらこ"達"にある。

「何考えてんの?」
大きな目で此方を見るたらこは私から見ても可愛くて、今仲良くしている人の中でも一等話しやすい人物だ。

『別に?たらこが相変わらず可愛いなって思ってただけ。』
「んふふ、嬉しいこと言ってくれるじゃん。でも俺は、可愛いよりかっこいいって言われたいかなぁ」
反応を見るようにちらりと寄越された視線を無視してやっぱり可笑しい、なんて一人思う。

この"セリフ"は本来ヒロインに言うはずのセリフだ、私じゃない。

無視したことは気にしていないのかそのまま前を向いて話出すたらこの声をBGMに教室へ歩みを進めた、その時

「きゃっ…」

小さな声と共に後ろから聞こえるどさり、と言う音。
『(あぁそっか、"原作が始まるのは今日か")』
呑気なことを考えて後ろを振り向く。
遠目から見てもわかる顔立ちの良さに流石主人公、と思いながらたらこに声をかけた。

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作者名: | 作成日時:2023年7月3日 21時

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