【wrwrd】俺らの可愛いニンゲンちゃん

43.仕事部屋 ページ43

「散歩はええけど、気をつけや」

目を逸らしたまま、ぶっきらぼうにそう言われた。

『あ、はい』

そういえば、トントンさんのことはあまりわからない。
直接、彼がこちらに寄ってくることはなかったし、なんだかいつもお目付役といった感じで、ちょっと厳しそうな雰囲気の人だ。
実際、私にあまり興味がないようで、一言そう告げると、そのままどこかへ行ってしまうようだった。

一体どこへ向かうのか。
行くあてもなく、暇を持て余していた私は、彼の後を付いて歩いた。

当然気づいてはいるのだろうが、彼はそれを止めようとはしなかった。
そのまま、彼の後ろを半ば駆け足になりながらたどり着いたのは、なんとなく見覚えのある場所だった。
確か、昨日オスマンさんに連れてこられたあたりだろうか。

「……俺に着いてきても、なんもおもろないぞ？」

ひとつの扉の前で、彼は初めてこちらを振り返った。
ご丁寧に、腰を折って、こちらに目線を合わせてくれたのは少し意外だった。きっと悪い人ではないのだろう。

動かない私を見て、彼は短くため息をつくと、その後ろにあった扉を開けた。

「邪魔はしたらアカンからな」

そういって招き入れてくれたのは、彼の執務室だろうか。
オスマンさんの執務室と作りがよく似ている。

トントンさんはというと、早速机に向かっている。
色々と積み重なったそこは、まさに仕事机といった感じで、彼の仕事っぷりが伺える。きっと、かなり忙しい立場なのだろう。
忙しなく手を動かして書類を捌いていく様は、まさに仕事人だ。

邪魔をするな、と言われた通り、私は大人しくソファに腰を下ろした。
あれだけの仕事っぷりを見せられては、なるべく存在を小さくしていようと努力したくなるものだ。

彼の邪魔にならないように、手近なところにあった本に手を伸ばした。相変わらず、中身は何が書いてあるのかさっぱりだが、何もしていないよりは気が紛れる。
にしても、挿絵も何もないのは流石に限界がある。何か、図鑑だとか、子供向けの絵本だとか、そういうものがあれば何かわかるかもしれない。
この世界に写真という技術があるかはさておき、絵でなら伝わるものがあるだろう。
この後は図書館に行ってみようか。

そんなことを考えていると、ふと感じる視線。


2022.1.11

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