19.改めて異常 ページ19
冷静になって、改めてこの状況の異常性を実感する。そして危機感が急に襲ってくる。
私は、訳の分からないこの状況に少々順応し過ぎていたみたいだ。あまりにも危機感がなさすぎた。
敵意を向けられなかったから。比較的良くされていたから。だからってこの人たちに気を許しすぎていたみたいだ。
「Aちゃん？」
名前を呼ばれるが、返事をする気にはなれない。
正体のわからない彼らだ。
仮に人間だったとしても、多数の男性に囲まれたこの状況では私が不利なのは明白だ。一対一だったとしても、私に勝ち目はないだろう。
逃げ場がないことを理解して、ボロボロと涙が溢れた。
きっと、彼らに媚びるしか、今の私にはできないのだろう。
しかし、どうしても笑顔を取り繕って尻尾を振ることはできなかった。
「あー……ごめん。悪気はなかったんだけど……ちょっと驚かせすぎちゃったみたい」
先程までのヘラヘラした態度とは違って、声のトーンを落としてこちらと向き合った神の人。
一歩近づく彼に反応して、私は一歩退いた。
「……ごめん。俺、戻るね」
しばし思案して、彼は部屋を出て行った。
それを、周りの人たちは黙って見つめている。
「落ち着いたようだな？」
一際低い声が、静寂を破った。
1番奥の席に座ったまま、その声の主はこちらを見据えている。
いつのまにかゾムさんの説教も終わっていたようで、ゾムさんがこちらへと近寄る。
「A？大丈夫か…？」
気を遣ってか、そっと伸ばされた手だったが、私はそれを拒否した。
「─ッ！A──」
「ゾム。ストップ」
さらに寄ろうとしたゾムさんと私の間に割って入ったのは、バツバスクの人だ。
「今はそっとしてあげよ。個体差もあるんだけど、この子はかなりデリケートな子みたいだから。今は……ね？」
マスクの人のその言葉に、ゾムさんは大人しく退がった。
「A、俺は怖いことせんよ」
弱々しい声でそう告げると、「ちょっと散歩してくる」と窓から飛び出した。
肩を落として窓の外へ落ちていくその姿がかなり危ういものに見えて、慌てて駆け寄り覗き込んだが、彼の姿はもうなかった。
「さて、解散としよう」
再び響いた低い声に、「せやなー」と皆さんが口々に言う。
「さて、そのニンゲンだが…」
2021.11.16
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ムチャ(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます。フィクションだから楽しめる設定ですよね…！ (2022年1月31日 20時) (
レス) id: 5c3af31097 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん - 少し怖い設定ですね…もし自分がこうなったらと考えると鳥肌が立ちます（褒めてます） (2022年1月26日 15時) (レス) id: 77d1f025e2 (このIDを非表示/違反報告)
ムチャ(プロフ) - カンナフューラー・スカーレットさん» コメントありがとうございます！今後の展開の参考にさせていただきます…！引き続き頑張りますのでよろしくお願いいたします〜！ (2022年1月24日 20時) (レス) id: 33a1921985 (このIDを非表示/違反報告)
カンナフューラー・スカーレット(プロフ) - めっちゃこの作品好きです！後下がリクしてるので私もいいですかね？受け付けてなかったら無視してくれて構いません夢主がピアノ弾いてみんながそれを聴いてびっくりするとかどうでしょう！trigger弾いたりしたら面白いと思います！これからも投稿頑張ってください！ (2022年1月23日 17時) (レス) id: ac012606e8 (このIDを非表示/違反報告)
ムチャ(プロフ) - ぽっぷこーんさん» コメントありがとうございます。上手く盛り込めるかわかりませんが、今後の参考にさせていただきます…！引き続き頑張ります！ (2022年1月20日 23時) (レス) id: 5c3af31097 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ムチャ | 作成日時：2021年11月4日 21時
