夢寐 Ⅳ (ページ44)

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髪をとかす＊AH ページ44

『A起きて』

名前を呼ばれて薄っすら目を開けると
困り顔をした秀くんでいつもの光景が広がっている

昔から低血圧でスッと起きられた試しがない私
家族ですら私を起こすのに一苦労してたのに
なぜか秀くんの声だと起きられる
それは学校を卒業して社会人になった今でもそうなんだから
秀くんには頭が上がらない
一方私たちの関係性は変化して幼馴染から恋人に変わって
結婚はまだだけど一緒に暮らすまでにはなったんだよね

『起きた？』

「んーっ」

もー起きてるでしょ？なんて呆れた顔して
私のことを抱え上げて立ち上がらせる

『ほら、顔洗ってきな？』

「…はーい」

ボケーっとしながら洗面所に立ち
顔を洗うとスキンケアして直ぐにコンタクトを入れる
ボヤッとしてた視界がたちまちクリアになって
少しだけ頭も冴えてきた

『終わった？』

「バッチリ！」

その後髪をとかして着替えてリビングに戻り
直ぐにダイニングテーブルに座る私とは打って変わって
キッチンに立って忙しなく動いてる秀くん
私は料理も全く出来ないから秀くんが毎日作ってくれてて
友達からもこんな高スペック彼氏いないよ？って
言われるくらい完璧なんだよね

『危ないよA』

「えーちょっとだけ」

料理を作ってる秀くんを見ていたら
なんかくっつきたくなって
そーっと近づいて後ろから抱きついたら怒られちゃったけど
必ずこっちを見て頭を撫でてくれるんだよね

『あ、またここ寝癖ついてる。
　本当にバッチリ？』

「え？嘘！」

秀くんに言われて自分の頭を触ると
ビョンとはねた寝癖

『ご飯食べたら直してあげるから。
　ほら、もう出来上がるから持ってって？』

「はーい」

まぁ秀くんに髪セットしてもらうの好きだから
直さないのはわざととは絶対言わないけどね。

『はい座ってくださーい』

朝食も終わり早速秀くんは
ブラシとかドライヤーとかスタイリング剤を
持ってきて私をソファーの下に座らせる

『A本当は俺に髪やって欲しいだけなんじゃない？笑』

「…違うもん。ちゃんと水つけて直した！」

本当は秀くんの言う通りなんだけどね

『ま、俺髪やるの好きだから全然いいけどね？』

そう言いながら寝癖直しウォーターを
シュッシュと髪にかけていく秀くん

『寝癖はね？根本からしっかり濡らして…』

なんか説明始まったけどぜーんぜん聞いてない
それより鏡に映る秀くんに夢中だから