夢寐 Ⅳ (ページ40)

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『Aじゃがいも剥いてくれる？』

「はーい」

狭いキッチンに並んで夕飯の準備
光成は人参を銀杏切りしてて
私はピーラーでじゃがいもと格闘中

『指、切らないでね』

皮を剥き終えじゃがいもを包丁で切る私に
そう声をかける光成
切るのは得意だから大丈夫なのに

「はい、できた！」

『ん、じゃあ鍋に水入れでじゃがいもに火かけて』

一人暮らしを始めた光成は
料理が好きになったみたいで
どんどん腕を上げている
前は、私のができたのにな

そんなこんなでポテトサラダの準備を終え
あとはメインのパスタだけ

『A、麺入れてくれる？』

ぐつぐつと沸騰した鍋に尻込みする
熱いのは昔から苦手
うー、やだなー。熱湯は跳ねたら

『大丈夫だよ。そろっと入れれば跳ねないから』

見守るような目で私を見る光成に促されるように
麺ををゆっくり鍋に入れる
よかった跳ねなかった！

『ほら、大丈夫だったろ？』

「うん」

『Aは怖がりすぎ笑』

ちょっと意地悪そうな顔でいう光成に
少しだけむーっと膨れてみる

『怒んなって！ほら、あとは俺やるから
　運んで準備しといて？』

そのまま膨れっ面で言われた通りに準備して
キッチンとリビングを往復する間
チラッと光成を見ると嬉しそうに笑ってる

「なんで笑ってるの？」

『ん？A可愛いなって』

光成に言われてカーッと顔が赤くなる
ねぇそんなことサラッと言わないで？

「いただきます」

あまり大きくないテーブルだから
2人分の食事を置くといっぱい
テレビを前に隣に座って作った夕食を食べる

光成お手製ソースのパスタが美味しくて
口いっぱい頬張ると

『A、ソースついてる』

私の顔を見てフって笑うと
口の横についたソースを光成が指で拭ったと思ったら
そのまま自分の口に持って行きペロっと舐める

「ちょ、汚い」

『全然汚くないよ』

んもー。と私が膨れると
落ち着いて食べないAが悪いでしょ？
なんて揶揄うように言われる
少しだけ癪だけどこんな何気ない会話でも幸せかも？