夢寐 Ⅳ (ページ37)

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「次のお客さまどうぞ」

スタッフさんが入口に手を向けて
笑顔で乗るように促してくる

『Aちゃん、いこっか』

颯太くんがエスコートするように
私の手を取ると2人で観覧車に乗った

入り口も閉められて今は2人きり
そんなに混んでないから上も下も人は乗ってない
観覧車の中はなぜか無言でちょっとだけ居心地が悪いなぁ
なんて内心思っていると

『ね、Aちゃん隣いい？』

最初は急いで乗ったから向かい合わせだったけど
颯太くんが隣いい？なんて聞いてくる
しかも上目遣い！あれ？これって私がすることじゃないの？
急に仕掛けてきた颯太くんにドキドキしながら
コクンと頷くと揺らさないように
ゆっくり私の隣に移動してくる颯太くん

『綺麗だね』

観覧車から見える景色は本当に綺麗で
光に照らされた海にキラキラ光るコンビナート
そこには現実とは思えないくらい綺麗すぎる世界が広かっている

「ほんと綺麗」

あまりの綺麗さに感動していると
膝に置いてあった私の手を包み込んでくる颯太くん
どうしたの？と聞こうと顔を向けたら
颯太くんの顔が目の前に広がって
思わずギュっと目を瞑ると
唇に伝わる柔らかい感触と暖かさ
あ、キスされたんだってその感触で気づいた

離れていった体温に目を開けると
私を愛しいものを見るように見つめている颯太くんに
胸がギューっとする。もう死んじゃいそうだよ。

『Aちゃん、観覧車のジンクスって知ってる？』

キョトン顔で聞いてくる颯太くん
うん、知ってるよ。陸人が教えてくれたから

『観覧車がてっぺんの時にキスすると
　ずーっと一緒にいられるんだって！』

だから俺とAちゃんはずっと一緒だね？
曇りのない笑顔で言う颯太くん
もちろん私も颯太くんのこと大好きだから
ずーっと一緒にいようね？

『観覧車のジンクス』

fin