夢寐 Ⅳ (ページ4)

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「お邪魔します。」

一人暮らしの颯太の家へ行くのはこれが初めてではなく
いかにも寄せました！な感じの部屋の中

『Aちゃん、テキトーに座っててぇ』

家主の颯太は飲み物の準備のために
キッチンでお湯を沸かしている

『はい、どぉぞ』

前にAちゃん専用のコップ買ったんだぁと
嬉しそうに見せてきたペールブルーの色をしたそれに
注がれた鼻腔をくすぐるココアの甘い香り

「いただきます」

ふーふーと息を吹きかけて少し冷ましてから
口をつけた私をニコニコと見ている颯太

『Aちゃん猫舌だもんねぇ』

颯太も自分のコップに口をつけるけど
“あつい”って涙目になってて思わず笑みが出る

『Aちゃんやっと笑ったぁ』

颯太に言われた言葉に目を丸くする
“なんかちょっとだけ元気ないなぁって思ってたから“と
言葉を続けられて颯太気付いてたんだと少しだけ胸がギュッとした

“あ、そうだ。”と何かを思い出し颯太は立ち上がり
カバンの中をゴソゴソし始める
“なんだろうと”その様子を見ていると
出てきたのはラッピングされた袋

『はい。あげる』

今日は誕生日でも記念日でもないしなんで？と首を傾げると
“いいから早く開けてぇ”とウキウキした様子で急かされ
結んであったリボンをシュルッと取る
薄い包み紙をゆっくり開けていくと
現れたのはあのワンピース

『Aちゃんに似合ってたからプレゼントしたくて！』

少し照れたような表情をしながら無邪気に言う颯太
颯太のことだから悪気なく純粋な気持ちなのは分かっているけど
昨日の女の子がチラついて視界が歪んでようやく出た言葉

「いらない」

と言って颯太にワンピースを突き返すと
“なんで？“と悲しそう表情をする
それから“どうして？“と理由を問われ続けるけど
言葉なんて出てくるわけなくて

“ごめん今日は帰るね“と
言って颯太の家を飛び出した