夢寐 Ⅳ (ページ28)

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『A今日も眠そうじゃん？』

机に伏せっているAに声をかける
Aの隣に座ると香ってくる安物のシャンプーの香りで
あ、またかと嫌でも勘づいてしまう

「そういう竜生もじゃん」

Aと話を合わせるため
わざとらしく大きな欠伸すると
平気そうな顔して突っかかってくるA

『ほら？俺には…ね？』

「あーはいはいそうですか。」

わざと濁して言うと
ほんの一瞬だけ傷ついた顔をして
また平気なフリをする

『何、Aもそうなんじゃねーの？彼氏と！』

じゃあ俺も傷つくからと
分かってるのにAもでしょ？と
聞きたくもないことを尋ねると
面倒臭そうに違うからと言って遮断されてしまった

俺全部知ってるよ
すれ違いでこうなったことも
俺のせいでAがこんなことしていることも

俺たちは大学のゼミで仲良くなった
気が合うしなんでも話せるし
最初は仲良い女友達としてしか見てなかった
けど次第にAが俺に向ける視線に
特別な感情が篭っていることに気がついて
ちょっとだけ戸惑った俺がいたけど
時間を過ごしていくうちに
俺もAの事好きだなって

自分の気持ちに気付き始めた時
他校の女の子に告白された
一目惚れなんです！って愛らしい顔に
いわゆる清楚系な身なり
聞いてみるといいとこのお嬢さんだという
けど全然タイプじゃないし断ろうと思ってたのに
このことを聞きつけた俺の友達が
Aに‘竜生彼女できたんだよ！’なんて
余計なことを言ったせいで
まだ何も返事をしていなかったのに
勝手に付き合ったことになっていた

俺も弁明しようと思ってた時に友達からAの話を聞く
“A年上の男と付き合ってるぜ”って
最初はなんで？って思ったけど
別の友達からは“年下の可愛らしい男の子だったけど？”
なんて違うことを言われる
あ、そう言うことかと感の良い俺は嫌でも気づいてしまった。