夢寐 Ⅳ (ページ24)

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「おにーちゃんきもだめし！」

弟に浴衣を着せると嬉しいのか家中を駆け回る
そんな姿をニコニコと眺めていると

「拓実悪いな」

『仕事でしょ？仕方ないよ。』

一緒に行く予定だった父さんは急に仕事が入って行けなくなって
弟と俺の2人で行くことになった

後ろ髪を引かれるように父さんが申し訳なさげに
仕事に向かうのを見送ると
俺らも肝試し大会の会場に向かう為、家を出た

弟は俺と手を繋ぎ“きもだめし”を連呼しながらブンブンと腕を振る
本当にこの日が楽しみだったんだろうな

会場に着くと周りをキョロキョロを見渡す弟

「あ、アオイちゃん！！」

『こらこら！ダメだって！』

アオイちゃんを見つけて走り出そうとするから
慌てて引き寄せて制するとブーっと不貞腐れる弟

人の通行の邪魔にならないよう木の下で
アオイちゃんと手を繋いでいるAさんの所に
弟を宥めて一緒に向かう

「アオイちゃん！」

大好きなアオイちゃんに会えて嬉しそうにする弟と

「こんばんは」

『あ、こんばんは』

ちょっとカッコつける俺

「拓実さんも来てたんですね」

『はい。弟に頼まれて…って、え？名前…』

「あ、この前お父さんが呼んでたの聞いてたんで
　私がお兄さんって呼ぶの変かなって…」

急に名前を呼ばれて真っ赤になる俺と、
俺に伝染されたかのように耳を赤くして下を向くAさん

「ね、Aちゃん！」

そこに現れた手を繋いだアオイちゃんと弟
なんだなんだ？進んでんなこっちのが

「ん？なぁに？」

しゃがんで弟と目を合わせるAさん

「Aちゃんもおにいちゃんときもだめしいこ！」

そう言うとAさんに立って立ってと弟が促して
アオイちゃんが俺の手を、弟がAさんの手を取ると
俺とAさんの手を近づける2人

「「はい、おててつなぎましょう」」

2人は俺らの手をジーッと見てて
多分握るまでずっと見るのを辞めないだろうなと思って
戸惑いながら俺から彼女の手をそっと握った