夢寐 Ⅳ (ページ23)

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弟から離れて立ち上がると
アオイちゃんと弟が楽しそうに話をはじめるのを横目に

『あ、えっと…』

「アオイの姉のAです」

俺がなにを聞きたかったのか分かったのだろう
自分の名前を教えてくれたAさん
弟から“アオイちゃんだよ！“ってさっき紹介されたから
妹さんの名前は知ってたけど
姉である彼女の苗字も名前も俺は知らなかったから

『すみません。送っていただいて』

「大丈夫ですよ。
　私が妹をお迎えに行ったら一緒にいた弟さん大泣きしてたんです。
　先生もお父さんとお兄さんに連絡がつかないって困ってて
　そしたら“アオイが一緒に帰る！“って
　言うんで連れてきちゃいました笑」

俺に気を使ってだろう
穏やかな顔をしながら事実を伝えてくれるAさん
ああ、俺がスマホを忘れなければ…とやっぱり落ち込んでしまう

「弟さん言ってましたよ。お兄ちゃんは世界一優しいんだって。」

“お兄さんの今の表情を見て私も優しい人なんだなって思いました。“
なんて笑顔で言ってくるから顔に熱が集まるのを感じた

「拓実！」

俺の名前を呼んで息を切らせながら帰ってきた父さん
Aさんに会釈をすると俺は父さんに“ゴメン！”と謝られた

「急な残業が入って拓実に連絡したけど連絡つかなくて
　で、今、保育園に寄って話を聞いて…」

「ごめん！俺も今日に限ってスマホを家に置いてっちゃって！」

2人でペコペコして反省し出すからその姿に笑い出すAさんと
Aさんの膝にぎゅっと抱きついて俺らを羨ましそう見ている弟

「仲良いんですね。」

「ぼくもなかまにいれてー！！」

弟が父さん目がけて走ってきた所でようやく気づいた
ヤバい！すっかり忘れてた。

『すみません！なんか俺ら自分の世界に入っちゃって…』

「いえ、大丈夫ですよ！よーし、アオイ帰ろっか？」

「うん！」

アオイちゃんがAさんの手を取り歩き出すと
弟が寂しそうにアオイちゃんたちに手を振りその隣に立つ俺

「アオイちゃんバイバイ！」

「ばいばーい」

俺達の方を振り返り手を振りながら帰って行く2人を
俺は見えなくなるまで見つめていた