夢寐 Ⅲ (ページ6)

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ふたりぼっち＊ON ページ6

ブブッ

スマホがメッセージが届いたのを知らせる音が鳴り響く
けど俺はこの瞬間のこの音が堪らなく嫌いだった

程なくして確かに先ほどまで存在していた温かさが消えていって

「じゃあね。尚大」

『またね。Aさん』

俺の住むマンションから出ていくその背中を
いつも最後まで見送ることが出来なくて
生まれたままの姿でシーツを被ったまま俺は
寝室で彼女とお別れをするんだ

『はぁ。』

今日はすこぶる調子が悪い。
ダンスのキレも良くないし、なんか頭も重い

「おり、大丈夫？」

声をかけてきたのは青木で
静かに俺の隣に座る

『んーなんかねぇ』

「なんか悩んでるって感じ？」

人の変化にすぐ気づく青木
さすが鋭いな

『いやー別に』

名前のない彼女との関係を
誰かに話したことなんてなくてごまかすことに徹する
俺が言いたがらないことに気づいた青木はただ俺の隣に座ってて
“あっ”と急に何かを思い出し
どこかへ行ったと思ったら手に何かを持ち戻ってきた

「これ」

手渡されたのは1冊の本で
タイトルを見ると“ふたりぼっち”と書かれている
作家名を見てもピンとこずどんな話か検討もつかない

『読んでみて？おり、好きだと思うよ』

“おーい青木、始めるぞー”
檜山に呼ばれた青木は“早く元気になってね”と
俺に一言残し檜山の元へと走っていった。