夢寐 Ⅲ (ページ45)

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服の裾を掴む＊FR ページ45

『からあげもーらい』

「あー最後の1個だったのに」

イタズラっ子のような顔で笑う竜生と
屋上で過ごすいつもの昼休みが
変わらず続くと思ってた

竜生のポケットの中で震えた
スマホの振動に気づいて
私は今日も心の中で“またかぁ”と呟く

『あーAごめん。ちょっと行ってくる』

届いたメッセージを見て1つ溜息をつき
私を見ると申し訳なさそうに言う竜生

“ごめんって言うならいかないでよ”と
言葉に出来ない思いを胸に抱えたまま

「大丈夫だよ。」

竜生には見えないように
自分のカーディガンの袖をギュッと握り締め
平気な顔をして今日も彼を送り出すんだ。

竜生がいなくなって
一人で残りの時間を過ごす
今日は雲もないいい天気なのに
私の気持ちは黒い雲で覆われていく

消化できないこの気持ちをなんとかしないと
上を向いて目を瞑り息を吐き出す
その状態でいると“キィー”と錆びついた屋上の扉が開いて
直ぐに“バタン“と重たい音で閉まる音が聞こえた後
近づいてくる足音

「またあいつのとこ？」

頭上から聞こえた声が
誰のものかなんて目を開けなくてもわかる

「そう。ここの所、毎日ね」

“隣いい？”と断りを入れてくるから
“どうぞ”と答えると少し間を開けて座った光成

「さっき竜生と階段ですれ違ったからからそうだと思った」

「あの子放課後だって理由をつけて引き止めてるのに
　最近は委員会一緒になったのを理由に昼まで呼び出し」

変わらない姿勢のまま会話を続けると
光成が苦笑いしている姿が目に浮かんだ