夢寐 Ⅲ (ページ41)

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母さんたちが出掛けてからも勉強を続け
時計を見ると2時間近く経っていた

少し休憩するかとその場で伸びをすると
“コンコン”とノックする音と一緒に聞こえてきた

“皇輝ー？”と呼ぶ星輝の声に
“何ー？“とその場で返事をすると開く扉

『星輝、何か用？』

顔も見ず星輝に話しかけるも返事がなくて
どうしたのだろうと振り返ると
そこにいたのは星輝ではなく

「皇輝くん、久しぶり」

俺の初恋の人であり
ずっと想いを寄せているAさんだった

適当な所にクッションを置き
そこにAさんに座ってもらって
その向かい側に俺も腰を下ろす

3年ぶりに会ったAさんは
すごく綺麗になっていて
顔をまともに直視することすらできない

お互い話すことなく黙っていると
先に口を開いたのはAさんだった

「皇輝くん、カッコよくなったね」

Aさんに褒められて顔に集まる熱
恥ずかしくてますます顔を見ることが出来ない

『あ…えっと…』

バカバカ！チャンスだぞ？何か話せ俺！！
自問自答した結果発した言葉は

『Aさんずっと前から好きです！俺の初恋なんです！
　よかったら付き合ってください！！』

勢いよく出た言葉は、
どう考えても場違いな告白だった

俺の言葉に固まってるAさん
そりゃそうだ。
数年会ってもいない実家の近所に住む人に
告白なんてされたら俺だって固まる。
ああ、振られるなこれと思っていると

「ありがとう皇輝くん。こちらこそよろしくお願いします。」

帰って来た言葉は予想とは違うものだった。
Aさんの表情をチラッと見ると
俺と同じ位真っ赤な顔をして下を向いている

『え？え？夢じゃない？』

「夢じゃ、ないよ」

そう言って顔を見合わせると2人で笑い合った

ここで2人の空気をぶち壊したのは
“おーい2人ともご飯！！！“の星輝の声
2人揃って1階に降りると
俺だけ星輝に引き止められる

「どうだった？俺からの特別な差し入れ」

『何、差し入れって』

「Aちゃんだよ！で、無事に付き合えたの？」

『え？なんでそれ…』

「俺が知らないと思った？Aちゃんの
　写真学生証に挟んでんの知ってるから。
　ちなみに母さんも知ってる」

『特別な差し入れ』

fin