夢寐 Ⅲ (ページ35)

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湧が襖を開けると私の目に飛び込んできたのは
グズグズと泣いている安嶋くんとそれを慰める3人

『Aなんで…いつも…行っちゃうの？
　おで、行か…ないで…って…思ってるのに』

私が来たことに気づかない安嶋くんは
3人に向かって自分の気持ちを吐き出している

その場で暫く呆然と立っていると
湧が安嶋くんに“A来てんぞ”と声をかける
お酒でトロンとさせた目であちこちと探し始める安嶋くん
内村くんが私を見つけて私がいる方向を指差すと
ようやく目が合って安嶋くんの目がジワジワと涙で溢れてくる

『Aちゃ、ん…』

私の名前を呼び真っ直ぐ歩いてくると
いつもでは考えられない位の強さで抱きしめられた

「あじーもういいだろ？素直に言っちまえよ！」

湧が安嶋くんに話すよう煽ると
“Aちゃん、ちゃんと話すから帰ろ？”と言われて
4人にお詫びをすると2人でその場を後にした

着いたのは安嶋くんの住むマンション
流石に安嶋くんを運ぶことは出来ないので肩を貸して部屋まで歩くと
玄関に入った瞬間に激しく唇を奪われる

「あ…じまくん、ちょ…」

流石に息が苦しくなって来て安嶋くんの胸を叩くと
ようやく離された唇

『俺、Aちゃんのこと大好きだから嫌われたくなくて
　だから平気なフリして合コンとかも“行っていいよ“言ってたけど
　ほんとは嫌で仕方なくて…。
　あとは、誰かがAちゃんのこと可愛いとか言うのも嬉しい反面
　取られちゃうんじゃないかって心配だし
　湧と仲良さげに話してるのも嫉妬してた。
　けど、素直に言うのが恥ずかしくて出来なかったんだ』

安嶋くんから言われた素直な気持ち
こんなに私のことを思ってくれているなんて初めて知って
今までの自分の行動がどれだけ彼を傷つけてたのかと思うと
申し訳ない気持ちでいっぱいになる

「安嶋くん…」

『それも嫌。湧は名前で呼ぶのになんで俺はいつまでも安嶋くんなの？
　名前で呼んで？』

ちょっと拗ねた顔でいう安嶋くんが可愛くて
“ひでくん？“と呼ぶと嬉しそうに笑って胸の中に閉じ込められた

男の嫉妬は醜いなんて言葉があるけれど
こんなに可愛い嫉妬なら大歓迎だよ？

『男の嫉妬』

fin