夢寐 Ⅲ (ページ33)

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湧が見せてきたのは
安嶋くんがよく遊んでいる人達のグループメッセージ
“今週の土曜、誰か飲みにいこ”と
安嶋くんが送ったメッセージが表示されていた

「あじさ、いつもなんだよ。
　基本は黒ちゃんとか颯太が飲みに誘うのに
　お前が男と遊ぶ時は決まってあじから誘いがくんの」

「そうだったんだ。知らなかった」

「まぁそれであじがどうなるかは俺の口からはいえねぇから、
　自分の目で確かめてみ？」

湧は私の個人メッセージに
“絶対来いよな”の言葉と共に時間と会場のアドレスを送って来た

土曜日
友達に誘われた合コン会場に向かっていた。
ついさっきまで一緒だった安嶋くんは別れ際に
“信用してるからね”と言うだけで引き止めはしてくれない。

「Aおっそーい！」

「ごめん、遅くなって。」

「いいから早く行こー」

集合場所に着くと友達3人は既に到着していて
背中を押されるように会場へと入っていった

合コンが始まり1時間位たった
友達3人は合コン相手と楽しそうに話していて私は蚊帳の外。
安嶋くんがいるから出会いなんてそもそも求めてないし、
湧から早く来いよ！なんて催促のメッセージも来ている
タイミングを見て抜け出したかったのに
言い出せる雰囲気じゃなくて困っていると

「ね、君も帰りたいんでしょ」

私の目の前にいた合コン相手の1人である豊田さん
大人しげな感じで、多分私と同じ人数合わせでの参加だろう

「はい。帰りたいんですけど雰囲気的にちょっと」

「そうだよね。けど君には待ってる人がいるんじゃない？
　さっきからスマホをチラチラ見てるから」

豊田さんの感の良さに驚かされる
“抜け出そうか。後のことはどうにでもなるから。“
私にだけ聞こえるような声で豊田さんが言うと

「ごめん！俺とこの子用事があるから帰るね！」

私たち2人が立ったのを見て注目が集まるけど
みんな酔っているのか“りょうかーい”位のノリで返されて
何事もなく抜け出すのに成功した