夢寐 Ⅲ (ページ3)

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「失礼しまーす。誰も居ないですよねー」

平塚に促され連れてこられたのは保健室
扉には“出張中”と貼り紙がしてあるのに
開けて人確認を入れる平塚に思わず笑う

『いるわけねぇだろ？書いてあんじゃん』

「えー念のためだよ。」

何か問題でも？と言いたげな顔をする平塚

『つーか勝手に入っていいわけ？』

「湧知らないの？俺、保健委員だから」

今度はドヤってくるし
ほんとこいつヤベー奴だわ。

「で、湧の心が狭いからAちゃんを怒らせたと」

“Aちゃんかわいそー”なんて追随までしてきて
俺から話を聞いた平塚が
傷を抉るようにマジレスしてくる

『あーそうだよ。俺が女々しいからこうなったんだよ』

「なんだ湧わかってんじゃん、自分が悪いって」

“でも素直になれないんだよねー”なんて言葉を続けてくるから
イラッと来て平塚にデコピンしてやった

『Aちゃん、湧が謝れば許してくれると思うんだけどなー』

「どうかな。アイツいつもじゃ考えられないくらいキレてたし」

『確かにAちゃんの口から“元木くん”なんて言葉聞いたの初めてかも。
　その日のうちに湧からちゃんと“ごめんなさい”してたらよかったのにねー
　まぁ、過ぎたこと言っても仕方ないけどー』

どうしたらいいかなんて分かってるし
俺がくだらないプライドを捨てれば済むことなんて分かってる
だけど、素直になれない自分に無性に腹が立った。