夢寐 Ⅲ (ページ1)

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怪我の手当て＊MW ページ1

「湧はいつもそうだよね？“俺はいいけどお前はダメ“って。」

本当に些細な事だった
俺の家に遊びに来ていた彼女とちょっとしたことで言い合いになった
頭に血が上った状態では冷静な判断なんてできなくて

『そんなこと言って、まさかお前ソイツと浮気でもしてんの？』

売り言葉に買い言葉で終わる気配のない喧嘩
Aはちゃんと理由まで話してくれたのに
男と2人っきりで買い物に行くなんていうから
普段部活だなんだでこうやって一緒に入れる時間が少ないのに
大事な時間をその男に奪われた気がして
子どもじみた感情を彼女にぶつけてしまう

「…もういい。何言っても無駄だし。」

呆れた顔をしてため息をつくと
鞄を手に取り玄関に向かうA

『おい！どこいくんだよ！
　まだ話終わってねーぞ！！』

追いかけもせずその場から大声で呼びかけたけど
返事はなく無情にもドアが閉まる音だけが響いていた

それから数時間経った
いつもならAから連絡が来るのに
何度スマホを開いても連絡はなし
どう考えても悪いのは俺なのに素直に謝れなくて
思えばいつも引いてくれるAに甘えていたんだと思う

『あーイライラする。』

誰もいない部屋に俺だけの声が響く
気分を虚しくさせるには充分すぎて
何もかも忘れたくてソファにダイブし目を閉じた