夢寐 Ⅲ (ページ50)

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足取り重く教室に向かう廊下を歩く
どんどん近づく教室に不安が募って
“あの子がまだいたらどうしよう”
“竜生とちゃんと話せるかな”
マイナスな感情が湧いてくる

足は動いているから
もちろん目的地についてしまって
閉まった扉の前で深呼吸をしてから
扉を開けると目の前には竜生の姿

『Aごめん！』

頭を下げる竜生の他には
誰もいない教室

『あの子にはちゃんと話したから。安心して？』

私の顔を覗き込みながら
“沢山嫌な思いさせてゴメン”と
悲しげな顔で言う竜生に黙って頷くと

“遅くなっちゃうから帰ろ？”と
教室を出ようとする竜生に
“竜生待って？”と咄嗟に服の裾を掴んだ

『A？どうした？』

足をとめ目を合わせて
どうしたのか尋ねる竜生

「ずっと…
　ずっと行ってほしくないって思ってた。
　ゴメンって謝るくらいなら行かないでよって。
　でも嫉妬してるなんて竜生が知ったら
　重いやつって思われそうで怖くて言えなかった。」

言葉を聞いた後
手を引かれて私の目の前は竜生の胸で一杯になる
竜生に合わせて腕をそっと背中に回す

『そっか…。気づかなくてゴメン。
　いつも平気そうな顔してからAに嫉妬もされないのかって思ってて。
　だから俺、断ろうと思えば断れたのにAの気持ちが知りたいなんて
　俺の一方的な感情でAのこと沢山傷つけた』

竜生も自分の気持ちを話して
回す腕に力が入るのを感じる

「お互い素直になればよかったね」

『そうだね。これからはお互い素直になろうか』

二人で気持ちを確かめ合い
“もう遅いから帰ろっか”
そう言って体を離すと
手を繋いで学校を後にした

『服の袖を掴む』

fin