休暇って”休む”って意味なんだけど、わかる? ページ11
「はぁ……」
−−結局、副長とやらに追い出された私は、日が沈む空の下をゆっくりと歩いていた。
休暇を貰ったはずなのに、物凄い疲れた気がするのは、気のせいなんかじゃないはず。
(どうしてこうも上手くいかないんだか……)
せっかく日輪様がくれたお小遣いも、ファミレス以外で使うことはなかったし、買おうとしていたお店は着いた瞬間閉まってしまった。
人気だって噂のクレープは売り切れちゃったし、団子屋も既に看板を下ろしていた。
「……明日、何しよ」
ふと空を見上げ、薄く顔を出している月を見つめる。
月の光がやんわりと夜空を照らすのを見て、その美しさに足を止める。
川の音が響き、荒んだ心が少しだけ穏やかになっていくのを感じる。
「……これが、江戸の空」
自由で何の縛りもないように見える空は、吉原から見る空よりも一際広く、大きく見えた。
それが何だか恐ろしくて、魅力的で、寂しげで、羨ましくて。
「おい」
「!」
不意にかけられた声に、びくりと肩を震わせて振り返る。
そこにはさっき追い出したはずの男−−沖田さんが立っていて。
「そこで何してんでィ。そんなとこでぼうっとしやがって。身投げでもするつもりかィ」
「えっ」
(いや、そんなつもり全くないけど)
そう言いかけて、ハッとする。
どうやら私が足を止めたのは橋の上だったらしく、あと数歩後ろに下がっていれば川へ真っ逆さまだった。
そんなので死ぬことは万一にもないが、確かに他所から見たら身投げしているようにしか見えないだろう。
そんなつもり、全くないけど。
「早く行きますぜ」
「はい?」
「……送りまさァ」
こちらへと向かってくる沖田さんの言葉に、私は首を傾げる。
おくる? 誰に?何を?
「さ、さすがに初対面でプレゼントは……」
「何言ってやがんでィ雌豚」
「メッ!?」
目の前を通り過ぎた男の言葉に、息を飲む。
(め、雌豚って何よ!?)
わなわなと震える拳を、今すぐ目の前の男に突き立ててやりたい。なんなら拳だけじゃなくてクナイでもいいけど!?
苛立ちに袖口へと手を差し込めば、ふと向けられる視線。
緋色の瞳は、月の光を浴びて怪しく輝いていた。
「っ、!」
「てめぇを家まで送ってやるっつってんだ。早く案内しろィ」
「え」
ぞわりと駆け抜ける寒気に息を飲んだ瞬間、聞こえた言葉に出たのは、本日三回目の驚きだった。
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羽衣瑠璃(プロフ) - おもしろかったです。続き、楽しみにしてます。 (5月17日 15時) (レス) @page33 id: 3065eb1929 (このIDを非表示/違反報告)
塩豆大福(プロフ) - みもりさん» 初めまして。お返事が遅くなってしまい、すみません…!まさかコメントいただけるとは思っておらず…!こちらこそ、読んでくださりありがとうございます!好みって頂けて凄い嬉しいです^^ これからも更新していくので、ぜひよろしくお願いします!! (2023年3月4日 23時) (レス) id: 6f796f69bc (このIDを非表示/違反報告)
みもり(プロフ) - ヤッバイおもろすぎます.....まだ主人公に靡いてない沖田さんもこれから伸び代ありそう...!とりあえず好きです好みですこれからもって頑張ってくださいいいい!! (2023年2月18日 1時) (レス) @page17 id: 838092b84b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩豆大福 | 作成日時:2023年2月7日 0時