『ねぇ、』【時透無一郎】 (ページ28)

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第二十七話ページ28

大正時代にタイムスリップする前のこと、
お勉強が得意とは言えない学生時代を過ごしていたAである。

お館様から届いた教材の中身はAにとって、
到底人様に教えられる難易度ではなかった。

だからこそ、無一郎が任務に励む間、一生懸命勉強した。
それにちょうど先生役も延期されていたから、勉強が捗った。

そんな努力は無一郎には見せていない。
努力はひけらかすものではないからだ。
と、言いたいところだが、
実際、ハタチを過ぎた大人が中学生レベルの学習内容を理解できていなかった事実を知られたくないという羞恥心の方が大きかったのである。

いざ、先生役を務める時。
得意げな顔をして教材を開く。

『じゃあ、夜中の努力のお手並み拝見とさせていただきますか』

「……….へ？」

『先生、僕のためにたっくさん準備してくれてたんでしょう？』

その言い方。悪意を感じる。
この純粋無垢風な笑顔の裏に腹黒さを感じる。

「何のことかな？そんなことより、今日は無一郎君が努力しなきゃね〜^^」

『先生は恥ずかしがり屋さんだね。嘘も下手だし。』

「恥ずかしくもありませんし、嘘もついてないですよ〜
はい、始めます！無一郎君は先生に対してもっと礼儀を正してくださいね」

どっちが年上なんだか、
どっちが先生なんだか、
気がつくといつも主導権は無一郎くんが握っている。