【イナゴ】マンガ家少女と少年たち～男子校はいろんな意味で危険です...～ (ページ38)

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アイデア３６　本当の自分。ページ38

「お前が空中に舞っていたとき、本当にイルカが水しぶきを上げながら
はねているように見えた。
それに、見惚れていたのも事実。
あれは綺麗だった。
でも、それとともに、不思議な感覚に陥った」

そうやって、すごく肯定されると照れてしまいそうになる。

このプレーは小学生のときからそうだったしね。

「あの時ね...いや、俺もよくわからないけど変な感覚だった。
時間がとまったような...」

「俺もだ。無意識にAって言ってたけど、それ、どっかの知り合いのことだとおもう(笑)
お前は桐谷桃矢だもんな！」

「あっ、まぁね...」

霧野君が本当の私の名前を呼んだとき、驚きを隠せなかった。
まさか、私と霧野君が出会っていた、だなんてことあるはずない。

いや、あっていてもおかしくないけど...。

知り合いって、霧野君もいってたし、気のせいでしょ。

動揺した私が馬鹿だと思った。

男になりきってるんだからわかるはずない。

霧野くんは、南沢先輩みたいに鋭くないし、

偶然が起こした出来事なんだよね。

...でも、

ここでは、桃矢なんだから、

男なのが当たり前。

隠して、隠して、なりきる。

...時々思う。

＿＿＿いつか、私が消えてしまうんじゃないかって。

ここの生活に馴染んでいくうちに、マンガのネタは貯まるとおもうけど、
逆に、今まで貯めてきた私が崩れ去るのでは？

と。

だから、南沢先輩の前が楽なのかもしれない。

素の自分がだせるから。

こんなこと考えていいのだろうか。弱い自分。

でも、やっぱり...

＿＿＿お前は桐谷桃矢だもんな！＿＿＿

そう、この学校では、私は桐谷桃矢を演じないといけないんだな、って考えると

少し不安になったのと

その現実を知らされた。