日プのオオカミちゃん (ページ44)

今日:9 hit、昨日:25 hit、合計:99,266 hit

考えることだけはやめないでページ44

-

柊「……グループの意味、」

廊下でうずくまっていた俺を見つけてしまったAちゃんは、少し考える表情を見せてからおもむろにストン、と隣に座ってきた。

さっきまで人一倍汗をかいていたはずなのになぜか、爽やかな石鹸のような、赤ちゃんみたいな、そういう柔らかい香りがその瞬間にすこしだけ匂ってきて思わずドキッと胸が鳴ってしまう。

それを隠したかったのかなんなのか、俺はまた、Aちゃんにぽつりぽつりと、弱音を吐いてしまっていた。

わからない。なんでこんなにAちゃんにはするすると口が滑ってしまうのか、自分でもわからなくて。

……話したく、ないのに。

Aちゃんの時間を、こんなことになんか使ってほしくないのに。

「……このバトルは、グループとしてデビューするためにはなにが必要なのか理解すること、グループの一員としてどこまで自分が成長できるんかを試されるバトルになる。だからそこもちゃんと考えんと、このバトルは絶対に乗り越えられへん」

……全然考えたことなかった。なんでグループなのか、とか、グループでいる意味とか。

なんで？ほんとだ。なんでなんだろう。

俺はともかく、Aちゃんやたじくん、柾哉くんは、きっと1人でも輝ける。

それくらいいつだってキラキラしていて、

やっぱりそれがすごく、すごく羨ましくて。

「わたしたちはさ、こうやって番組側が用意してくれてグループになれるやん。しかもデビューする前にこうやって予行練習もさせてもらえる。それってほんまにありがたいことで、でも世の中には、それすらも叶わんまま埋もれていく人達がめちゃくちゃいっぱいおる。それはぜったい忘れたらあかん。わかるやろ？それは」

柊「……それは、わかる」

「……グループとして1曲披露させてもらえるのって、当たり前じゃないんよ、ほんまに」

でも、Aちゃんはちゃんと知ってるんだ。

自分のことも、グループとして自分が活動していくその意味も、全部。

だから強いのかな。

だからAちゃんは強くてかっこよくて、可愛くて、綺麗に俺の目には映るの？

「……柊くんは今、苦しいんやろ？」

柊「……ん」

「でもそれはちゃんと解消せなあかんと思う。どうやって解消するか考えんと」

柊「……考えても、わかんなくて、」

「……なんで分からんのかも、考える」

柊「……なんで分からないのかも、？」

「そう。考えてみて。柊くんなら分かるよ」