日プのオオカミちゃん (ページ18)

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お隣いいですか？ページ18

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「お隣いいですか？」

ふわっとした柔らかい声が左の上の方から聞こえて、本からゆっくり顔を上げる。

そこにいたのは顔立ちの端正な、小顔の美青年。両手には、朝ごはんであろうお弁当が大切に抱えられている。

ああ彼は確か……アントニーくんと冬馬くんと同じの……、と、喉元まで出かかってつい、言葉に詰まってしまう。

「……だめですか？」

「っあ、いや、ごめんなさい大丈夫です。どうぞ」

許「よかった。ありがとうございます。……僕、許豊凡って言います。Aちゃんと、ずっと話がしてみたくて」

「ああ、それはそれはご丁寧に。大神Aです。……シュウくん？って呼べばいい？」

許「うん、なんでも呼びやすいのでいいよ。フェンフェンでもいいし」

「……フェンファンなのに、ふぇんふぇん？」

許「うん。そう呼んでる人もいます」

「……ふぇんふぇん」

許「ふふ。Aちゃんかわいいですね。ご飯は食べましたか？」

「か、……朝ごはんなら、さっきバナナ食べました」

許「バナナだけ？ちゃんと食べないと倒れちゃうよ」

「はい。ご心配ありがとうございます」

許「いえいえ」

シュウくん、もといフェンフェンの敬語が混じったりタメ語になったりする言葉たちはなぜか、朝のあまり働いていない頭でもすんなり入ってきやすい。

不思議だ。

声がいいっていうのももちろんあるだろうけど、彼がちゃんと一言一言、自分のなかで大事にしてから発声してるのが、なんとなくわかるからというのもありそうだ。

横の彼がいただきます、ときちんと言ってからお弁当に静かに口を付け始めたので、わたしも静かに読書を再開させる。

朝ごはんを食べに来た練習生で少しガヤガヤとうるさくなってきたが、フェンフェンは黙々と食べ進めてるし、わたしも集中してるので何も問題は無い。

許「……あの、Aちゃん」

「え、はい」

許「朝ごはん食べ終わったら、僕と一緒に踊ってくれませんか？」

「……ダンスパーティーのお誘いみたいな誘い方するね、ふぇんふぇん」

許「あは。Aちゃんの僕の呼び方、赤ちゃんみたいでほんとかわいい」

「……」

許「……え、怒りましたか？ごめんなさい、」

「あ、いや、ごめんなんでもないです……」

いや、すみません。ただフェンフェンの素直すぎる「かわいい」に心打たれてしまっただけです。